大谷院長は、熱中症対策では水分補給が最も大切だと語る。
「5~6月にやっておきたい熱中症対策は、暑熱順化しやすい体作り。つまり適度に汗をかくことです。激しい運動は必要ありません。ジョギングやウォーキングなど有酸素運動で軽く汗をかくのがおすすめです。時速6キロ未満の早歩き程度のウォーキングを30~50分行えば十分です」
他に、食生活を通したこんな熱中症対策があるという。
「スイカを筆頭に、フルーツに塩を振って食べるのは理にかなっている。フルーツはほとんど水分で、カリウム、カルシウム、マグネシウムが少量含まれていますが、唯一足りないミネラルがナトリウム。ここに塩をかけると、かなり汗の成分に近いものが摂取できます。ある建築会社では、暑い工事現場での熱中症対策としてバナナに塩をかけるそうです。私も試してみましたが意外といけます。パイナップルに塩も合う。ただし、フルーツの食べすぎは糖分の過剰摂取につながるのでほどほどが肝心です」(大谷院長)
体温を適切にチェックするのも有効だ。黒木教授はこう語る。
「体に不調を感じたら、自分の体温を測定するクセをつけておくと良いです。道具は市販されている普通の体温計で十分。ちゃんとタオルで汗を拭いた脇に挟めば、正確な体温を計測できます。熱中症寸前の人は、測ると39度になっている可能性が高い。タオル、ハンカチと体温計だけいつも携行しておいて、異変を感じたら測ってみるだけでも全然違います。普段から自分の体温に意識をもつこと自体が、熱中症予防につながるのです」
くれぐれも熱中症を侮るなかれ。(桜井恒二)
※週刊朝日 2023年6月2日号