AERA 2023年3月27日号より
AERA 2023年3月27日号より

「一般企業の管理職も『ゴール』『通過すべき点』という位置づけから外すのです。課長や部長は、誰もがたまたまなるものにしてしまえばいい。ミッションが終われば、一般社員に戻って働く。そうすることで、管理職への受け止め方は大きく変わるでしょう」(常見さん)

 時代の変化に対応しながらも、より良い組織運営のために尽力する管理職を確保すること。これからの企業に求められていることだろう。

■80歳まで働くなら

「管理職の仕事」をポジティブなものとしてとらえ、日々奮闘する人は他にもいる。

 子ども向けブランドの会社で働く大阪府の女性(42)は、1年ほど前から15人の部下を率いる「PRマーケティング部部長」を務めている。

「たしかに管理職は大変な面もあります。部下たちにとって求心力のある上司でありたい意識は強いのですが、辞めるときは辞めてしまう。人の管理は難しい。でも一方で、大きな裁量のある仕事を任され、会社に貢献できることは管理職ならではのモチベーションになります」

 女性は管理職の仕事を「いずれ経営者になるためにも必要」とも位置づけている。

「私たち以降の世代は80歳まで働く世代だと言われます。人生のほとんどを何らかの『仕事』に費やすことになるので、サラリーマンでなくとも起業する、個人事業主として仕事をするなど、あらゆる場面で個人の能力が問われる時代になってきたと感じています。管理職の仕事は大変さはあるけれど、経験値が多くて損をすることはない。与えられたチャンスをものにして、もっと女性の活躍を広めていってもらいたいと思います」

 管理職の醍醐味とは、何なのか。組織内のチーム開発にくわしい立教大学経営学部助教の田中聡さんは、管理職の仕事とは「他者を通じて事をなす」ことだと話す。

「そこにいる人たちの強みを最大限引き出し、組織の成果に結びつけていく。きわめて高度な専門性が求められる仕事です。言い方を変えれば、自分ができる限界を超えてチームの力を使うことができる。それを生かす裁量権が与えられていて、行使できる。これは管理職の醍醐味だと思います」

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