例えば高知の郷土菓子でもある「中菓子」。飴とセンベイの中間という意味から名付けられた菓子で、小麦粉、砂糖、水飴を配合して作られる、どこか懐かしい味わいだ。小麦粉のケンピも、今も同店で作り続けられる味の一つ。東京から高知に戻り、洋食から菓子の世界に転身して33年。「あのとき、継ぐ決心をして良かった」と満足げにほほ笑む。
「勤め人と自分の店をやるのと、両方を経験して思うのは、いい仕事をするには、ある程度リラックスすることが大事ということ。もちろん緊張感も必要やけど、気を使ってばかりやなくて、周囲の人と調和してリラックスした上で、一生懸命やる。それが何よりの長生きの秘訣で、仕事を続けていけるコツやないかな」(同)
年齢をものともせずに、淡々と、そしてイキイキと働き続ける“カツオの国”久礼の現役なシニアたち。そこには巷にあふれる健康法などに頼らぬ、それぞれの現役哲学があった。長い人生いろんなことがありながらも、「まだまだ、もっとやりたい」と明るく前を見据えるその姿には、コロナの影響など微塵も感じさせないエネルギーが満ち溢れていた。(フリーランス記者・松岡かすみ)
※週刊朝日 2023年5月19日号