菓子を作る西村勝己さん(80)
菓子を作る西村勝己さん(80)

 一緒に店を切り盛りする娘さんも、「こっちが疲れるぐらい動きます」と苦笑する。本井さんに「ゆっくりしたいと思うことはないんですか?」とつまらぬ質問を向けると、「全然ない」ときっぱり。

「ゆっくりしよったらイライラするがね(笑)。とにかく仕事が好きやし、仕事ができゆううちが楽しい。今も腰さえ痛くなければ、もっともっとやりたいし、あれもこれもしたいという気力はある。死ぬまで動き続けたいね」(同)

 大正町市場の入り口に位置し、半世紀を超えて愛されてきたのが1950年創業の手作り菓子の店「西村甘泉堂」。2代目店主の西村勝己さん(80)が、先代から受け継いだ味を守り、丹精込めて日々さまざまな菓子を作り上げる。特に夏場になると、秘伝の手作り蜜のかかったかき氷を求め、多くの人が訪れる菓子店だ。昔懐かしい手作り菓子は、店のみならずスーパーや道の駅などでも販売されている。

■リラックスして一生懸命が大切

 西村さんの朝は、まだ外が真っ暗い夜中の2時から始まる。毎日4時半ごろまで仕込みをし、その後朝食を食べて6時ごろから配達へ。7時ごろに帰宅し、1時間ほど新聞を読んでコーヒーを飲みながら一息つく。その後、9時に店をオープンし、夕方4時まで店に立つ。寝るのは夜8時。仕込みは80歳の今も、西村さんが一人で全て行っている。

「自分でも年齢を聞いたら気絶しそうになるけど、ありがたいことに全く体の不調がない。いまだにお客さんに呼ばれたら、走って出ていくもん。この80年間、一度も入院したことがないし、体を壊したこともない。特段、健康について考えたこともないし、歩いたり体操したりの健康法も特にしてないけどね。母も95歳まで現役で働いて、99歳まで生きたき、その遺伝もあるかもしれんね」(西村さん)

 学校を出た後、18歳から47歳まで東京のホテルで洋食を作りながら働いた。初代にあたる父親が亡くなったのを機に、店を継ぐことに決めた。洋食一本でやってきたため、菓子については門外漢。そこで高知に戻ってからは、母親と職人の背中を見ながら必死に菓子作りを覚えた。今も新たな味を出すことはせず、昔ながらの味を徹底して守り続ける。

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