100年続く店の暖簾を守る本井友子さん(83)
100年続く店の暖簾を守る本井友子さん(83)

■何かしてないと落ち着かない

 久礼の名物としても知られ、暑い季節には店先に行列ができるのが、大正10年創業の“ところてん”の老舗店「高知屋」。ところてんといえば、地域によって食べ方が異なることでも知られる。関東は酢醤油+青のり+和がらしが一般的だが、関西では甘い黒蜜をかけてデザート感覚で食べるのが主流だ。

 一方、ここ高知では、冷やしたカツオだしに地元産の生姜を添えて食べるのがお決まりだ。「高知屋」のところてんもしかりで、こだわりの鰹節にじゃこ、醤油、そして四万十川源流域の伏流水で作ったカツオだしのつゆは絶品。だしの利いたつゆごとザブザブッとかきこむ同店のところてんは、100年にわたる久礼の夏の風物詩としても知られている。

 そんな同店の2代目で、83歳にして現在も店に立つのが本井友子さん。現在は3代目となる息子さんが店を継いで切り盛りしているが、本井さんも手伝いを続けている。

「じっとして、ようおらん(じっとしていられない)性分ながよ。今は腰が痛くて、立って仕事するのがしんどくなってきたけど、どれだけ腰が痛くても、何かしてないと落ち着かんき」(本井さん)

 23歳で同店に嫁ぎ、夫の実家の家業である店を手伝い始めた。夫は漁師で、一度漁に出ると8~9カ月は帰ってこない生活。そこで近くに住む妹と一緒に、3人の子育てをしながら長年にわたって店を切り盛りしてきた。夏場の繁忙期は、夜中の1~2時から仕込みを開始。子育て中は、深夜から仕込み作業をして、夜が明けたら配達に行き、そのまま子どもの部活の試合を見に行って、店に戻って営業するなど、休む間もない生活だった。

「忙しかったけど、それが楽しかった。いっぱい働いて、いっぱい遊んで、いっぱい飲んで(笑)。昔は忙しい中でも、週4~5日は外で飲むのを欠かさんかったけど、今は自家製の果実酒をコップに1杯。とにかく体いっぱい動いてきたき、後悔はないね」(同)

 今も少しでも隙間時間を見つけると、畑仕事をしたり外に出かけたり、何かを始めたり。80歳を過ぎた今も、じっとしている時間はほとんどない。

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