日本では基本的に、すべての物事が「早く、ちゃんと」進む。教育改革実践家の藤原和博氏曰く、これは、日本の学校教育が戦後数十年にわたって「早く、ちゃんとできる、いい子」を育て続けた成果なのだという。藤原氏は、新著『学校がウソくさい 新時代の教育改造ルール』(朝日新書)の中で、学校教育が習慣づけた諸外国に誇るべき価値観について、もう一つ「信用(クレジット)」をあげている。「挨拶ができる」「約束を守る」「人の話が聴ける」ことの習慣がもたらしてくれた物は何なのか。その内容を、同著から一部を抜粋、再編集し、紹介する。
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■信用とは他者から与えられる信任の総量
もしもあなたが、「人生を営む上で一番大事なものはなんですか?」と質問されたら何と答えるだろうか?
お金、権力、はたまた教養、家族、あるいはもっと抽象的に、愛とか創造性だと答えるかもしれない。私なら、どうか。
迷わず「信用」と答えるだろう。
「信用(クレジット)」である。
信用とは、全人生を通じて積み上げていくものであり、信頼と共感の関数であると考える。拙著ではいつも、「他者から与えられる信任の総量」だと定義していて、これが高ければ、人々はあなたにもっと大きな仕事を任せたいと望むだろうし、あなたの選択肢や自由度はそれに伴い広がっていく。だからこそ「信用」とは、人生における幸福感の源泉だと言っていい(「信用(クレジット)」についてさらに知りたい方は、『45歳の教科書―戦略的「モードチェンジ」のすすめ』<PHP研究所>を読んでほしい)。
ところが、不思議なことに「信用とは何か?」「どうしたら信用が得られるのか?」「信用が棄損した場合(失敗したりしてダメージを受けた場合)、どんなふうに修復すればいいのか?」について、学校では一切教えてくれない。それどころか、親が教えることも稀だし、会社に入ったり公務員になっても、上司から改めて教わる機会はないに等しいだろう。