なぜなのか?
私にはそれが長年の疑問だったのだが、もしかしたらそれは、学校教育があまりにも自然かつ当たり前に与えているものだから、改めて取り上げて教える必要がなかったのではないかと思えてきた。
中学生向けに2006年に執筆した『「ビミョーな未来」をどう生きるか』(ちくまプリマー新書)には、信用がある人の条件として、次の10箇条を挙げた。
第一は、挨拶ができる。
第二は、約束を守る。
第三は、古いものを大事に使う。
第四は、人の話が聴ける。
第五は、筋を通す。
第六は、他人の身になって考える。
第七は、先を読んで行動する。
第八は、気持ちや考えを表現できる。
第九は、潔さがある。
第十は、感謝と畏れの感覚がある。
実はこれは、中学生にだけ通用する10箇条ではなく、大人にもそのまま当てはまる「信用のある人の条件」になっている。
そのため先述の『45歳の教科書』では、自分の前半生の“棚卸し作業”として、この10項目をそれぞれ5点満点(5:よくできる、4:できる、3:普通、2:あまりできない、1:できない)で採点して合計し、50点満点で自己評価することを勧めている。
なぜならそれが、後半の人生のための「見えない資産(インビジブル・アセット)」になるからだ。この点数が高い人ほど味方がつくから、自分の力だけでなく他者からのエネルギーが流れ込む。すると、夢やビジョンが実現しやすくなるという仕掛けだ。
この10箇条は、全人類に共通する「高クレジット人間の掟」かもしれない。
このうち、「挨拶ができる」「約束を守る」「人の話が聴ける」は、学校教育で先生たちが最も重視する三種の神器だ。親が子に教える家庭教育の大原則とも重なる。
少しだけ、解説してみよう。
(1)挨拶ができる
挨拶とは、人間関係の基本だ。
人間が社会を構成して生きる以上、グローバルにも第一の原則になる。