中日は落合博満・元監督の下で04年から11年の8年間で4度のリーグ優勝、07年には日本一に輝き、全てのシーズンでAクラス入りと黄金時代を築いた。しかし、落合元監督が退任した12年以降は長い低迷期に。10年間で8度のBクラスと優勝から遠ざかるシーズンが続いた。常勝軍団復活へ、救世主として期待されたのが立浪監督だった。
改革は一朝一夕では成し得ない。立浪監督はNPBで指導者経験がない。手探りの部分があっただろう。だが、周囲が驚く決断を次々に下す。昨年は根尾昂を外野手にコンバートしたが、開幕後に遊撃に戻すと、シーズン中としては異例の投手に転向させた。自身の監督就任で招聘した中村紀洋打撃コーチも5月下旬に1軍から2軍に配置転換。6年ぶりの最下位に低迷した昨オフは、立浪監督の構想から外れた京田陽太をDeNAに放出して砂田毅樹をトレードで獲得。さらに中軸を打っていた阿部寿樹も楽天・涌井秀章との電撃トレードで手放した。同年はリーグワーストの414得点に終わっただけに、阿部のトレードは驚きの一手だった。
立浪監督の改革は決して的外れとはいえない。ドラフト7位で入団した福永裕基はミート能力が高く、二塁手のレギュラーに定着。現役ドラフトでDeNAから獲得した細川成也は大ブレークし、4番に座っている。侍ジャパンでWBC制覇に貢献した高橋宏斗、昨年頭角を現した岡林勇希は投打の中心選手だ。
だが、チーム力が上がっている実感がない。投手陣は阪神に次ぐリーグ2位のチーム防御率2.86と健闘しているが、問題は長年の課題である貧打だ。63試合でリーグワーストの172得点。広いバンテリンドームが本拠であることを差し引いても、1試合平均2.73得点では、「守り勝つ野球」でも投手陣の負担が大きすぎる。長年主軸を担ったダヤン・ビシエドに衰えが見られ、新外国人で補強したアリスティデス・アキーノ、オルランド・カリステ、3年ぶりに復帰したソイロ・アルモンテが全く機能していないのは大誤算だが、外国人選手の活躍を計算に入れるチーム作りは危うい。
スポーツ紙記者は、「立浪監督は就任2年目になりますが、どういう野球をやりたいか、色が見えてこない。機動力を使って揺さぶるわけでなく、淡泊な攻撃で相手にプレッシャーを与えられない。強打者をそろえているわけではないので工夫しないと得点が入りませんよ」と分析する。