その後、5月30日に岸田文雄首相(自民党総裁)が公明党の山口那津男代表と会談し、連立政権の枠組みには影響させないことで一致。別の自公幹部協議では、公明が擁立を決めた埼玉14区と愛知16区については、自民が支援する方向で調整すると伝達した。自民党は事態の沈静化を図ったが、東京選挙区を巡る問題はいまだ解決していない。
ある自民党関係者は言う。
「10増10減の影響で、東京都は衆院選の選挙区が新たに5つ増えて30になります。公明党はその増えた選挙区でどうしても議席がほしい。そこで自民党側には何の打診もしないまま、候補者を擁立してしまった。実は、公明党は結構高圧的なんです。そうした振る舞いに『もう我慢できない』という雰囲気が自民党の中にあるのは事実です」
自民党内で不満がたまる背景には、公明党の集票力が右肩下がりになっていることも無関係ではなさそうだ。04年参院選比例区の約862万票から、昨年7月の参院選は約618万票まで落ち込んだ。18年間で240万票以上も減ったことになる。
前出の自民党関係者はこう語る。
「集票力が落ちていることを考えると、いつまでも公明党のわがままばかり聞くわけにもいかない。憲法改正や中国問題など、公明党とは政策的な隔たりも大きい。今までのような高圧的なやり方を続けるなら、『もう結構だ』という空気にもなります。選挙協力をしてもらうために大量に名簿を出す自民候補もいるが、その名簿を使って、創価学会の信者たちが有権者に電話をかけたり、訪ねて行ったりすることも多い。今の時代、こうしたやり方に批判的な人もいて、紹介した人から『あなたは創価学会員なのか』と聞かれることもある。そういう負担もあるんです。たしかに公明党の協力はあれば越したことはないが、もしなくなっても、それほど困るわけではない」
東京の選挙区のある自民党議員の選対関係者も、あくまで強気な姿勢を崩さない。
「公明の比例票がすべてが野党に流れるわけじゃない。たとえ公明の推薦がなくなったって、(創価学会の人は)共産党には100%投票しないし、東京では維新にも入れないでしょう。自由投票になるだけで、『絶対に自民党の候補に入れるな』ということではないんですよ。だから、総得票数から公明の票を引き算して『次の選挙は危ない』、みたいな単純な話じゃない。ただ、自由票がすべて白紙投票になったら予測は大きく変わるから、それだけは避けてほしいと思う」