岡田監督も苦い思い出がある。指揮を執った08年7月に阪神は2位以下に最大13ゲーム差をつけて首位を独走していたが、巨人が9月に12連勝をするなど猛追。驚異的なペースで白星を突き重ねた相手の勢いにのまれ、リーグ連覇を許した。劇的な逆転優勝は「メークレジェンド」と形容され、原辰徳監督は名将としての評価を高めた一方で、岡田監督はV逸の責任を取ってこの年限りで辞任。明暗が分かれる形となった。
今季から岡田監督は15年ぶりに阪神の監督に復帰。通算17年目の指揮を執る原監督と雌雄を決する戦いが実現した。「2008年の再現」が注目されるが、民放テレビ関係者は厳しい見方を示す。
「08年と今年では巨人の戦力が違いすぎます。08年は小笠原道大、アレックス・ラミレス、イ・スンヨプ、谷佳知、グライシンガー、クルーンら大型補強した選手たちが中心となり、高橋由伸、二岡智宏、阿部慎之助と充実した戦力でしたが、今年は坂本勇人、丸佳浩、菅野智之ら主力選手に衰えが見え始め、若手を我慢して起用する過渡期に入っている。救援陣にも不安があるので大型連勝する力はない。阪神に追いつくのは厳しいでしょう」
リーグ3連覇を狙うヤクルトも元気がない。昨季56本塁打の日本記録を樹立し、三冠王に輝いた村上宗隆の打撃不振が響き、塩見泰隆、山田哲人もコンディション不良で常時出場できていない。生命線の救援陣も守護神・マクガフが昨季限りで退団したことにより、勝利の方程式を確立できていない。5月31日の日本ハム戦に敗れて4年ぶりの12連敗を喫するなど、借金13で最下位に転落。上昇気流に乗るまではまだまだ時間がかかりそうだ。
爆発力を秘めているチームが昨季2位のDeNAだ。今季も3、4月は16勝7敗とスタートダッシュに成功。5月は6連敗、4連敗を喫するなど月間9勝13敗1分と負け越したが、阪神にとって最も脅威に映る球団かもしれない。今永昇太、東克樹、石田健太、ガゼルマンら先発のコマがきっちりそろい、救援陣も伊勢大夢、三嶋一輝、ウェンデルケン、上茶谷大河、入江大生と球に力のある投手がそろっている。守護神・山崎康晃が不安定なのは気がかりだが、実績のある投手だけに状態を上げていくだろう。打線もNPB史上初の打率4割到達の期待がかかる宮崎敏郎、佐野恵太、牧秀悟を中心に強打者がそろっている。今季ブレークした関根大気の貢献度も高い。
「阪神が警戒しているのは巨人でもヤクルトでもなく、DeNAでしょう。昨年の夏場の快進撃を見ても分かる通り、勢いに乗ったら止められない。一方で、攻守に精度が低い部分もあり連敗すると歯止めがきかないもろさがある。計算できないチームなので不気味ですが、6月以降も取りこぼす試合が続くようだと、阪神が独走する可能性もある」(在京スポーツ紙記者)
阪神はDeNAとの対戦カードで14年から8年連続勝ち越していたが、昨年は9勝16敗と9年ぶりに負け越した。今年は6勝2敗と勝ち越しているが、今後どのような戦いを繰り広げるか。18年ぶりのリーグ優勝に向け、一番の難敵になりそうだ。
(今川秀悟)