「入学後の単位取得の見込みがない」「高校を卒業できない可能性が高い」と判断されるからだ。高校中退者の問題が取りざたされるため、学校も気になるのだろう。

そのような場合は、前述(2)のように教育委員会が協議をしている。

大阪府立箕面東高等学校の佐藤誠治校長(54)は、試験や面接について、こう考える。

「高校入試では、不登校や非行のあるなしで合否を判断していません。面接で、中学生のときに頑張ってきた経験や、高校での目標について何も話せない生徒もいます。そんなときは、高校に入学して新たな気分でスタートが切れるように、やる気を引き出すような声がけをします」

定員内不合格を否定しない文科省


他県の校長が定員内不合格を出す理由の根拠は、前述の学校教育法に「高校教育は中学校での学びの上に積み上げるもの」で、「進路に応じて高度な普通教育、および専門教育を行う」と定められているからだ。「能力がある人は大学まで行ける」という解釈につながりやすい。

このため、文科省も今年3月の国会質疑で永岡桂子文部科学大臣が、「定員内不合格自体が直ちに否定されるものではございませんが、定員内でありながら不合格を出す場合にはその理由が説明されることが適切であると考えております」と答弁し、定員内不合格を否定しない。

こんな背景から、ある教育委員会は「校長に定員内不合格を出さないよう指導することは、その時期の子どもの学びの保障にはなるが、一方、法令違反になる」とジレンマを抱える。

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社会にある公立高校に対する風潮