このほか、生徒の興味関心に合った職業選択につながるよう、パソコンでの作曲や一眼レフカメラで撮影法を学ぶなどの選択授業もある。取り組みの成果として、中学校では不登校でも高校3年間は皆勤だった生徒も多い。

将来の進路や職業の幅を広げる


「高校入試で定員内不合格がなくなると、勉強する動機がなくなる」という意見も見聞きする。しかし、私たちが勉強している目的は高校に入学することだけではなく、その先の将来の進路や就きたい職業の幅を広げるためだ。

大人が子どもにできることは、視野を広げて人生の選択肢を増やす環境づくりにすぎない。

そう考えれば、前述の歴史を振り返って、中学時代に学習した学力を知るためのテストは必要であっても、少子化の時代では高校に入学するための「入学者を選抜するための試験」は、もはや不要ではないか。高校進学希望者は全員入学を基本とする、あるいは、高校義務教育化を検討すべき時期に来ている。

※行政では、高校入試における学力検査については「受検」と表記しているが、本稿では読者の読みやすさを優先して固有名詞以外は「受験」で統一している。

*1 文部科学省[2022]、「令和4年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」p32
*2 文部科学省[2022]、「高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料」
*3 文部科学省、戦後における高等学校入学者選抜制度等の経緯
*4 「高等学校入学者選抜について」(文初中第552号 昭和25年11月1日 大学学術局長から都道府県教育委員会・知事あて)