AERA 2023年3月20日号より

 今回の事件を受け、各省庁や自治体は摘発された会社の指名を相次いで停止した。5月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)、25年の大阪・関西万博などの準備が滞ると心配する国や自治体の声も伝えられている。

 建設業界の過去の談合では、他の事業への影響はさほど大きくなかったという。スーパーゼネコンが摘発されても代わりを準大手ゼネコンが担ったからだ。

「その点、広告業界は電通や博報堂などわずかな会社の寡占状況にあるので、影響は大きくなると思います」(中里さん)

■組織委は電通に丸投げ

 特にスポーツ界では電通が強く、組織委もあらゆる仕事を事実上「丸投げ」していた。電通が専任代理店となったスポンサー契約はもちろん、パブリックビューイング、開閉会式の管理進行までもだ。電通には陸上の世界選手権やサッカー・ワールドカップなど国際スポーツイベントを担ってきた実績もあった。

 電通と五輪の問題を追ってきた、元博報堂社員で著述家の本間龍さんは言う。

「電通には圧倒的なノウハウの蓄積があります。簡単に言うと、担当者が何もしなくても電通がイベント運営会社も工事業者もあらゆる業者と交渉して、スケジュールを組んでくれる。それに、電通なら納期に間に合わない心配もないですからね」

 その代わりに──。

「電通はもちろん広告会社が入ると手数料がかかります」(本間さん)

 本間さんによると、一般的な広告会社の契約では十数%程度の手数料(管理料)が支払われる。電通に尋ねると、

「個別取引の詳細については、守秘の観点から回答を控える」(広報担当者)

■メガイベントに限界

 五輪関連で電通に支払われた金額はわかっていない。ただ、本間さんは確信している。

「電通の、電通による、電通のための五輪でした」

 そして、談合事件についてはこう分析する。

「今はどの広告会社も売り上げに苦慮しています。だから、組織委と電通に『各会場の担当をしませんか』と目の前に肉をぶら下げられて、飛びついてしまったのではないかと思います」

 こうして開かれた五輪について、社会思想史家の酒井隆史さん(大阪公立大学教授)は言う。

「メガイベント自体に限界があります」

次のページ