全国制覇を果たしたゆるキャラといったら、有名なのは彦根市のひこにゃん、次に奈良県のせんとくんだろう。ところが、ここへ来て急に存在感を発揮しだしたキャラがいる。本県のくまモンだ。誕生したのは2010年。だけど当初は、本人いわく〈熊本県民も あまり知らない、熊本のシンボルです〉だった。それが翌年には350ものゆるキャラが集まる「ゆるキャラグランプリ2011」で見事1位を獲得!
『くまモンの秘密』はそこに至るまでを綴った汗と涙の記録というか自慢本。もともとは『もしくま──もし、しがない地方公務員集団「くまモンとおもろい仲間たち」が小山薫堂氏の「もったいない主義」他を読んだら』という私家版の冊子だったそうで、著者名は「熊本県庁チームくまモン」だ。
 くまモンがユニークなのは、なんといっても地元を離れ、大阪で活動をはじめたことだろう。それも熊本ではなく大阪のPRをする。お披露目は甲子園球場の看板で、「くまもと」の文字は申し訳程度に入っていただけ。次はくまモンが大阪市内のあちこちに出没する「くまモン神出鬼没大作戦」。その間にも名刺だけは配りまくり、活動の内容は「くまモン大阪出張紀行」というブログにアップする。本当に伝えたいのは〈九州新幹線全線開業! 大阪←→熊本・約3時間〉〈2011年3月熊本がグンと近くなる!〉ということだったけど、それはたまにそーっと出すだけの、謙虚かつ自虐的な日々。その結果、一介の非常勤キャラにすぎなかったくまモンは県の営業部長にまで出世し、費用対効果はなんと予算の8倍に当たる6億4千万円!
 いまやご当地キャラがいない自治体を探すほうが難しいほどの日本だけれど、キャラはデビューさせただけじゃダメなのだってことがよーくわかる。〈いちおう、公務員です〉というスタンスが泣かせる。みんなもアウェイで汗をかけ。知名度アップに血道をあげる全国の自治体のみなさまはとりあえず必読だ。

週刊朝日 2013年5月17日号

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