
責任ある立場の女性たちが、更年期の不調に悩まされながら働いているケースは少なくない。会社経営者の40代の女性もその一人だ。更年期の症状とどのように向き合ったのか。AERA 2023年3月13日号の記事を紹介する。
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都内で社員十数人のベンチャー企業を経営する女性(49)が体調に異変を感じたのは、半年前。急に疲れやすくなった。
以前は朝から晩まで会議をこなし、出張で地方へ頻繁に出かける生活でも平気だったのに、明らかにおかしい──。
部下の仕事ぶりに度々腹が立った。ストレスをため、気心が知れた経営メンバーに愚痴をこぼすようになった。気持ちが昂(たかぶ)り、会食中に泣き出したこともある。家庭では娘の受験も重なり、イライラが募った。
おまけに年明けから、手のひらなど体の一部が急に熱くなる「ホットフラッシュ」が顕著になった。朝起きられず、布団から出られない日々が続いた。
「私、いよいよ更年期かも……」
女性は、そう自覚した時の感情をこう語る。
「なぜ、今、私が沈まなきゃならないの?って悔しくて、家族の前でわんわん泣きました。10年以上経営を続けてきて、VC(ベンチャーキャピタル)も入れ、数億円の資金を調達して会社をスケールさせようっていう段階になったのは、ここ3年です。今が頑張り時なんですよ」
■女性ホルモンが急減
更年期は、閉経の前後の45~55歳頃とされている。女性の心と身体の働きに作用する女性ホルモンの「エストロゲン」が急激に減少することで、身体的、精神的失調をもたらす。年上の経営者仲間から、「いざとなれば、エストロゲンを補うことで更年期症状を改善するホルモン補充療法(HRT)など医療的な手だてもある」と経験談を聞いた女性は婦人科を受診し、今年1月から、HRTを受けている。
「会社のかじ取りを担う自分は、ずっと沈んでいられないし、できる対策があるなら、早いうちに手を打とうって思ったんですよ。治療が効く効かないは個人差がありますが、私の場合、今は比較的体調が安定しています」