その司令塔のポジションには、いま大きな変化が起きている。
ラグビーワールドカップ2015からラグビーワールドカップ2019まで日本代表SOとして君臨した田村優(横浜キヤノンイーグルス)が、今夏はNDSの一員としてウルグアイ代表との第1テストに先発。田村に代わる第一候補だった松田力也(埼玉ワイルドナイツ)は負傷で選考外となり、ラグビーファンの中に待望論が根強かった山沢拓也(埼玉ワイルドナイツ)がウルグアイ代表との第2テストではSOを務めた。山沢はフランスとの第1テストにも先発予定だったが、直前に新型コロナウイルス陽性となって離脱。フランスとの2試合では代表デビューの李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)が日本代表の司令塔の重責を担った。
李はキックやタックルなどラグビー選手として高い能力を発揮し、今後の一層の活躍を大いに期待させた。日本代表の司令塔としては、世界最高の攻撃コーチであるトニー・ブラウンコーチの練り上げた戦術を理解し、その戦術に従って、試合中刻一刻と変わる状況を正確に認識し、正しいプレーを選び続ける能力も求められる。田村はこの点に優れ、さらに2012年にエディー・ジョーンズヘッドコーチが最初に選んだ日本代表に名を連ねて以来10年間に渡って継続的に国際舞台で経験を積んできた。李が来年のワールドカップまでの短い期間にどこまで司令塔としてレベルアップできるか。
世界に目を向ければ、実力がアップしているのは日本代表だけではない。今夏のテストマッチシーズンでは歴史に残る試合がいくつも生まれている。
7月16日にはアイルランド代表がニュージーランド代表オールブラックスとの第3テストに32―22で快勝し、フランス代表に代わって世界ランク1位の座についた。
アイルランド代表は第2テストに続く連勝で、テストマッチシリーズも2勝1敗と勝ち越し。来征したチームがオールブラックスとのテストマッチシリーズにニュージーランド国内で勝ち越すのは、1994年以来実に28年ぶり。ブリティッシュ・アンドアイリッシュライオンズを含めても史上4度目という歴史的な快挙だった。