
ジャンボはからだが大きいぶん、なんでもしのげちゃう。逆に俺が本気になって行かないとなかなか真正面から戦ってくれなかったからね。俺が意地になって向かっていったのは、地方の人にジャンボの強さや凄さをもっと見てもらいたいという気持ちもあったからだ。
そんなジャンボも、テキサスでの修行が長かったもんで、すっかりカウボーイスタイルに染まってしまってね。あるとき、ニューヨークで試合があるから、先に団体のオフィスにあいさつに行ったんだ。普通ならスーツで行くもんだけど、カウボーイブーツでベルトに大きなバックルつけて「ハーイ!」なんて入っていっちゃったんだって。「あのときはひんしゅくを買ったよ(笑)」って言ってたっけ。俺もそうだったけど、テキサスにいるとカウボーイスタイルがカッコいいと思っちゃうんだよね。
テキサスは田舎だけど、そんな土地を地元の人は愛していてね。ドリー・ファンクとテリー・ファンク、彼らのお父さんのファンク・シニアは自分たちが生粋のテキサス人=テクサン(Texan)であることを誇りに思っているんだ。牛を飼ってカウボーイとして生き、牛や馬の糞が転がっているような場所でレスリングをして、泥まみれになって戦って雌雄を決するのがカッコいい。なんでも競争して男を決めるのがテクサンだ。
一方でニューヨークやサンフランシスコをテリトリーにしているレスラーは身なりも都会的だ。特にレイ・スティーブンスは、俺が会ったときはおっさんだったけど、本当にセンスがよくて試合もすごく上手くてカッコよかったよ。中でも一番いいかっこうをしているのがニューヨークをテリトリーにしているレスラーで、ハルク・ホーガンはその代表格だ。
1992年か93年頃、ホーガンがプロスポーツの長者番付に載って、みんなのプロレスラーを見る目が変わっていったよね。俺もニューヨークでホーガンが飛行機のファーストクラスから降りてくるところを見て、やっぱり本物だって思ったよ。飛行場にも迎えの車がきてさ、格が違うね。プロレスはキツイわりに稼げないってイメージをホーガンがガラリと変えた。それまでプロレスで何億円も稼ぐヤツはいなかったもんな。俺もいっときSWSにいたときはそうだったよ。非難轟々だったけど(笑)。俺もみんなに“プロレスは稼げる”という夢を与えたんだよ!