「年だから仕方ない」「認知症だったら怖い」などと、物忘れを放置していないだろうか。前段階やごく初期の認知症なら、発症や進行を防げることがあり、治る病気が隠れていることもある。まずは原因を調べることが大切だ。
* * *
その物忘れが老化によるものなのか認知症によるものなのか、症状だけで判断するのは難しい。不安なら精神科や脳神経内科、脳神経外科、老年科などへの受診をおすすめする。国立精神・神経医療研究センター病院認知症センター長の塚本忠医師は次のように話す。
「地域で認知症をみようという動きが進んでいて、『物忘れ外来』などを設置する病院は増えています。まずはかかりつけ医に相談してもいいですし、地域の『認知症サポート医』や市区町村の『認知症疾患医療センター』などを調べて受診してもいいでしょう」
認知症は、脳の障害や病気により記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に影響が出ている状態をさす。物忘れ以外にも、以前と比べて行動や性格が変わったようにみえ、それにより対人関係が悪化している場合などは注意が必要だ。
物忘れの診察は、どのような症状がいつごろから、どんなときに表れるかなどを患者本人や家族からくわしく聞き、病歴や薬の服用についても確認することから始まる。
認知機能を調べる「神経心理学的検査」には、簡易検査(スクリーニング)から、臨床心理士が時間をかけておこなう検査まで多くの方法がある。
簡易検査では「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS−R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」が用いられることが多い。どちらも30点満点で、HDS−Rでは20点以下、MMSEでは23点以下だと「認知症の疑いがある」と判断される。
■複数の方法で多角的に診断する
どの検査をどう組み合わせるかは、患者の症状や病院の方針で異なる。あしかりクリニック副院長の須貝佑一医師は、「記憶力や判断力などの状態を多角的にみるために、物忘れで受診した患者さん全員に、HDS−RとMMSEの両方をおこなっています」と言う。