故障者続出のチーム事情から、第83代4番に大抜擢されたのが、中井大介だ。
15年4月29日の中日戦、開幕以降、阿部慎之助、亀井善行ら主力の離脱が相次いでいた巨人は、前日の中日戦でも4番・坂本勇人が左ふくらはぎを痛めてリタイア。野戦病院さながらの窮状を前に、原監督は、現有戦力である2番・片岡治大、3番・橋本到らの打順を変えることによってリズムを崩さないよう配慮した末、「ベストの選択」として、4番に中井を入れた。
オープン戦では打率4割超をマークした中井だが、栄光の巨人軍の4番は、やはり荷が重かった。初回2死三塁の先制機に力んで三ゴロに倒れるなど、2打数無安打で途中交代となり、「7番で打てないのと、4番で打てないのとでは、チームに与える影響が違う」とガックリ肩を落とした。
だが、「いい経験になったと思う」という原監督の言葉どおり、中井は17年にキャリアハイの90試合に出場し、球団通算1万号を含む5本塁打を記録した。1度も規定打席に達したことがないのに、歴代4番の一人になり、球団のメモリアルアーチでも名を残したのは、まさに“持っている男”だ。
このほか、松原誠(81年)、マイク・ブラウン(90年)、二岡智宏(06年)、ジョン・ボウカー(13年)らも1試合限定の4番を務めている。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。