●東京湯島 シンスケ
創業大正14年。黒格子に清潔な縄暖簾と酒(さか)ばやし(杉玉)。店内は白木造りに真っ直ぐな一枚板カウンター。湯島天神祠(ほこら)以外、飾りものは一切ないきりりとした空間は東京風の美学だ。客は近所の東大、芸大の先生から仕事早仕舞の職人まで、皆ここで酒を飲むことに誇りをもって通う。話題は相撲と落語。3代目はお燗番、4代目は包丁だ。
●東京神楽坂 伊勢藤(いせとう)
神楽坂の黒塀に囲まれた古い民家。店内真ん中の囲炉裏(いろり)に炭火が熾(おこ)り、端座の主人が黙々と燗をつける。ビールや焼酎はなく、酒は燗。座ると出てくる一汁三菜。冷房なし団扇(うちわ)あり。冬はストーブあり。声高の話は禁止。昭和20年の創業店は戦災で焼け、今の建物は昭和23年だが、店は戦前と全く変わらない文化財級の居酒屋。
●東京神田 みますや
創業明治38年。今の建物は関東大震災後、昭和3年のもので2階建て銅貼りの看板建築は堂々たる東京の居酒屋の押し出し十分。壁に並ぶ黒札品書きは<こはだ酢><どぜう><桜鍋>など東京の正統的な肴ばかり。100年を超えた、現存する最も古い東京の居酒屋でありながら大衆居酒屋であることを通す東京居酒屋ファンの聖地。
●八丈島 梁山泊(りようざんぱく)
周囲を太平洋に囲まれた島は魚の宝庫。小粒の青唐辛子を浸した?油で食べるトビウオなど刺身は爽快そのものに八丈島酒に合う。春の海藻を魚くずと固めた<ブド>、島オクラを板摺(いたずり)した<ネリ>。<明日葉てんぷら>はあくまで衣薄く、名物<くさや>は漬汁から出した"新鮮"がすばらしい。そして最後は絶品<島寿司>だ。交通費をかけて一泊で訪れる価値のある、東京の誇る名居酒屋。