92年のセ・リーグは1位のヤクルトが69勝(.531)、2位の阪神が67勝(.515)、同率2位の巨人が67勝(.515)、4位の広島が66勝(.508)だった。勝率.531での優勝は、平成以降で最低勝率だった。この年の序盤は、広島と阪神、ヤクルトが首位を争い、6月に巨人が10連勝して4チームによる大混戦となった。広島は前年のディフェンディングチャンピオン。直近5年間で4度最下位だった阪神は、投手陣に仲田幸司、湯舟敏郎、中込伸、打撃陣にオマリー、パチョレックを擁し、さらに「亀山努、新庄剛志」フィーバーの勢いで、一躍優勝戦線に名乗りを上げた。

 一方のヤクルトは、岡林洋一、西村龍次の先発投手、古田敦也、池山隆寛、広沢克己(現・広澤克実)、ハウエル、飯田哲也ら打撃3冠部門のタイトルや盗塁王を狙える打者をそろえた。野村克也監督いわく「1年目に種をまき、2年目に水をやり、3年目に花を咲かせましょう」の有言実行となった。9月11日には甲子園プロ野球史上最長時間試合(延長十五回6時間26分)の死闘もあった。阪神・八木裕の打球は外野フェンス上部に直撃、真上に跳ねてスタンドイン。サヨナラ本塁打が、エンタイトル二塁打に訂正された。七回からリリーフした岡林が延長十五回まで9イニングを「完投」。「あれがサヨナラ本塁打だったら戦局は大きく変わっていただろう」と野村監督。以降はヤクルトが阪神との1カ月に及ぶマッチレースを制して14年ぶりに優勝した。

 2010年のセ・リーグは、1位の中日が79勝(.560)、2位の阪神が78勝(.553)、3位の巨人が79勝(.552)。6月終了時点で、07年からリーグ3連覇を果たしていた巨人が独走していた。しかし、06年以来の優勝を狙う中日、そして05年以来の優勝を狙う阪神も追いかけた。原辰徳監督率いる巨人は東野峻と内海哲也の先発2本柱、小笠原道大、ラミレス、阿部慎之助、坂本勇人、長野久義らタレントをそろえていた。真弓明信監督の阪神は、エース・久保康友を擁し、来日1年目のマートンが214安打、ブラゼルが47本塁打。落合博満監督の中日は、チェンと吉見一起の左右のエースをそろえ、浅尾拓也(59ホールドポイント)と岩瀬仁紀(42セーブ)の勝利の方程式で勝ち星を重ねた。阪神は打線が好調で驚異のチーム打率.290、巨人もチーム本塁打数が226本と打ちまくった。だが、中日は広い本拠地球場の「地の利」を生かして、チーム防御率で1位。ホームゲーム51勝17敗1分けと貯金を稼いで優勝した。中日は翌年も勝ってリーグ2連覇を果たした。現役時代、三冠王3度の落合監督の「守り勝つ野球」は、04年からの8年間でリーグ優勝4度、日本一1度と熟成していた。(新條雅紀)

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