2022年のパ・リーグは上位4チームによる大混戦が繰り広げられている。9月10日、129試合目にして昨年のパ・リーグ王者のオリックスが初めて単独首位に立った。翌11日は、首位のソフトバンク、2位の西武、3位のオリックスがゲーム差ゼロ。20日時点で3位の楽天が首位のソフトバンク(2位はゲーム差ゼロでオリックス)に3.5ゲーム差と大混戦となっている。
オリックスは絶対エース・山本由伸を擁する。18年、19年と「チーム打率1位・チーム防御率6位」でリーグ2連覇を果たした西武は、リリーフ投手の充実もあって今季のチーム防御率は2位。ソフトバンクは千賀滉大、東浜巨、モイネロと投手陣が踏ん張る。楽天はここにきて涌井秀章の復帰が大きい。各チーム残り試合はそれほど多くないが、大混戦はどこまで続くのか。プロ野球の順位は勝率で決定されるが、平成以降、3チーム以上で大混戦を展開した記憶に残るシーズンを振り返ってみよう。
1989年に130試合制だったパ・リーグの最終順位は、1位が近鉄で71勝(勝率.568)、2位がオリックスで72勝(.567)、3位が西武で69勝(.566)と、1厘差で3チームがひしめいた。引き分け試合が少なかった関係で、2位のオリックスのほうが、1位の近鉄より勝利数が多かった。89年を説明するにあたり、前年の88年の「10・19(10月19日)」と呼ばれる死闘を語らねばなるまい。森祇晶監督率いる西武は全日程を終了。近鉄が優勝する条件は、残されたロッテとのダブルヘッダーに2勝しなければならない。引き分けも許されない。1戦目、九回表に勝ち越して勝利した近鉄だったが、2戦目は延長十回引き分けに終わってしまった。
翌89年、ホームラン打者の門田博光が移籍してきたオリックスは開幕8連勝。しかし、西武と近鉄が追い上げ、三つどもえとなった。10月9日終了時点で首位の西武と2位のオリックスは1ゲーム差となり、西武と3位の近鉄は2ゲーム差。10日終了時点では、オリックスが3連敗で、3位に転落。西武が近鉄に1勝1引き分け以上で優勝という状況だった。迎えた10月12日、今度は西武とのダブルヘッダーとなった近鉄は、1戦目にブライアントが郭泰源からソロ本塁打、同点満塁本塁打、渡辺久信からソロ本塁打を放った。2戦目にも高山郁夫から勝ち越しソロ本塁打と、ブライアントは4打数連続本塁打。2連勝した近鉄にマジック2が点灯し、勝利の美酒に酔うのである。「10・19」からつながる2年越しの優勝は、94年の巨人と中日の130試合目の最終決戦「10・8決戦」とともに伝説として語り継がれている。