「人の前で睦みあえと言うのは辱めでしょう」と。
しかし綱吉こそ毎夜毎夜、情事のさまを次の間で聞かれているのだ。
「そうか、これは辱めであったか。どうであった、私の夜の営みは!?」
嘆き、痛み、怒り、絶望。すべてを発して綱吉は慟哭する。「将軍とは、この国で一番卑しい女のことじゃ!」
これ、まずよしながふみの原作漫画が素晴らしいんだけど、その芯の部分を濡れ場含めて演じきった仲里依紗も最高だ。
子を失った母の空白、父の願いに応えられぬ娘の苦しみ、将軍という外向きの顔、実は右衛門佐を思慕する乙女心。
あらゆる女の情が凄まじくて、いつもうさんくささみなぎる山本耕史がちょっと漂白されてた。
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
※週刊朝日 2023年3月10日号