※写真はイメージ。本文とは関係ありません(Aajan / iStock / Getty Images Plus)
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 紹介してもらって、なたね油を搾る小さな工場を見学しました。工場、というよりは工房と呼んでもいいような、懐かしく温かく感じる規模です。かまどだったか、古いレンガ組みの様子が、まるで絵本に出てくるようで印象に残っています。

「昔、カネミ油症事件(注)、というのがあったんです。そのとき、祖母が『おっかねえ油つくるんでねえよ。自分らで食べたくないもん、つくるんでねえよ』といったんですよ。その言葉をずっと守っているんです」というのは、製油会社の社長さんの説明。搾ったあとも、薬剤を使わずにお湯で何度も洗って精製して不純物と油を分離する方法でつくり上げた、おいしいいい油でした。

 油の搾り方について教えてもらったことを覚えています、というか忘れられずにいます。圧縮搾り、というのはよく聞く言葉で、つまりぎゅうっと押し潰してたら~りと出てくる油を搾る方法ですが、搾りかすが残るわけです。で、普通の油の場合はそこに、ノルマルへキサンという溶剤を入れてさらに搾るのだそうです。溶剤、つまり搾りかすのなたねに残る油を溶かし込んで浮き上がらせるわけ。そうして上に浮いて来た油を加熱して溶剤を揮発させると油が残る、つまりたくさん搾れる、歩留まりがよくなるのだそうです。

 見学していた私たちのところに、その工場では使っていないノルマルへキサンの小瓶が回ってきて、順番にみんなで匂いを嗅ぎました。「あっ、ベンジン!」「あっ、ベンジン!」という小さな声が広がりました。私は、揮発してこれがなくなったとしても、なんだかちょっと心配、食べ物じゃないものを使うわけだからなあと思ったのでした。

 で、なぜ今こんな話をしているかというと、ロス=「捨てる」、「捨てない」ということに関係しているように感じたからです。

 ノルマルへキサンを使って搾れば、同じなたねからたくさんの油が搾れる。そこで残ったなたねの搾りかすは肥料として使われることもあるそうですが、私にとっては不安の残ったものになります。だから、こっちの方こそロスにしたいもの、そう思えました。

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