甲子園優勝は高校の悲願だが、試合に勝ち進むと「経費」がかかることにもなる。
甲子園優勝は高校の悲願だが、試合に勝ち進むと「経費」がかかることにもなる。
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今夏の甲子園で創部初の準優勝を果たした下関国際高(山口)。快進撃に注目が集まったが、勝ち進んだことで選手の滞在費や応援などにかかる経費が想定を上回り、9月中旬からクラウドファンディング(CF)で2000万円の寄付を募っている。担当者は「小さな学校ですが、がんばっているナインを少しでも勇気づけたかった」と理解を求めつつ、甲子園のような大舞台では大きな金がかかる現実に苦渋をにじませる。

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 8月18日に行われた甲子園の準々決勝。春夏連覇を狙う、絶対的な優勝候補の大阪桐蔭を1点差で撃破した下関国際の快挙に、甲子園が沸騰したシーンは記憶に新しい。

 その熱狂の陰で、学校側は経費面の問題に直面していた。

 同校の野球部は1965年の創部。歴史はあるものの、県大会は初戦敗退に終わることが多かった。

 2005年に坂原秀尚監督が就任して以降も部員が足りない時期があり、コツコツと力をつけて全国区になったのはごく最近のことだ。17年夏に初の甲子園出場を果たし、今夏が春夏合わせ5回目だった。

 甲子園の最高成績は18年夏のベスト8。同校は、その時を参考に、この夏の経費を約3500万円程度と見積もり予算立てをし、各方面から寄付を募った。

 だが、誤算があった。

「初出場の時は、地元の企業様などから、ご祝儀的にたくさんの寄付をいただくことができました。今回も温かい支援をいただき感謝しておりますが、初出場時に比べると金額としては厳しい数字でした」と、同校の担当者は実情を明かす。

 下関国際は全校生徒が約300人と、小規模の学校だ。卒業生も少なく、寄付が集まりづらいハンディがある。また、部の卒業生らによる後援会やOB会などの組織作りも道半ばだ。

「野球部が強くなって以降の卒業生も、社会に出たばかりです。後援会など、支援する体制がしっかりしている甲子園の伝統校とは、大きな差があると思います」(担当者)

 応援団を乗せる貸し切りバスは、一台で約60万円かかる。同校では、生徒から応援の有志を募ったが、バス代の一部として一人あたり5000円の自己負担を求めた。

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総経費は4500万円超