記憶にない――。この言葉を何回繰り返しただろう。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)とのかかわりが次々と明らかになっていった山際大志郎氏。結局、最後まできちんとした説明はせず、経済再生担当相を辞任した。岸田政権で不祥事による閣僚の辞任は初めてだが、これで終わるのか……。
妙な既視感を抱いた。旧統一教会をめぐる問題で10月24日に辞任した山際大志郎経済再生担当相が、官邸で記者団に答えた時だ。岸田文雄首相に辞表を出したタイミングについて「予算委員会が一巡し、今後の国会審議に障らないようにと考えた」と山際氏は述べたが、その目はただうつろで、この問題をどこか他人事と考えているような印象を受けた。
同じような「無責任さ」を政治家の顔に見たのは、2007年7月17日のことだった。第1次安倍政権で2代目の農林水産相(当時)に就任した赤城徳彦氏は、顔に複数の絆創膏(ばんそうこう)を貼って現れた。
赤城氏は自殺した故・松岡利勝農水相の後任。松岡氏は政治資金収支報告書に、事務所費や水道光熱費を過剰計上したことなどをメディアや野党に追及され、それを苦にして自殺した。
しかし、後任の赤城氏も郵便料金の二重計上や林業関係者でつくる政治団体「林土連懇話会」からの献金を収支報告書に記載しなかった件などで、メディアの追及を受けていた。
後に赤城氏は絆創膏を貼った理由について「肌が弱いのでかぶれた」と言い訳したが、それを信じる人はいなかった。絆創膏は問題から目をそらすためのもの、あるいは同情を引くためのものと受け取られた。そして赤城氏の言動からは、何の「責任感」も感じ取ることができなかった。
それは「後出しジャンケン」と言われながらも、のらりくらりと旧統一教会問題から逃れようとしていた山際氏の往生際の悪さと共通する。
しかも、就任直前まで、山際氏は国会で弁明を繰り返していた。野党は「積み重ねた審議時間がムダになった」と怒り心頭だ。