さて、ここにきて岸田政権は、第1次安倍政権と似てきたように思えてくる。まずは閣僚の不祥事だ。
06年9月に始まった第1次安倍政権は、12月に佐田玄一郎行政改革担当相が7800万円もの架空の事務所経費を収支報告書に記載していたことで辞任したことから始まり、翌年1月には柳沢伯夫厚労相の「女性は子供を産む機械」発言、5月には光熱費問題などを野党に追及された松岡利勝農水相の自殺、6月に久間章生防衛相が「原爆投下はしょうがない」と発言して翌月辞任するなど、大臣の不祥事が続き、11カ月の短命に終わった。
今年8月10日に始まった第2次岸田改造内閣も山際大臣のほか、寺田稔総務相の事務所家賃虚偽報告問題や、事務所の家賃収入を税務申告しなかった問題が発覚した秋葉賢也復興相など、不祥事を抱えている。
官邸からのコントロールがいまいち利かないのも共通する。第1次安倍政権では官房長官は閣僚経験のない塩崎恭久氏で、「お友達内閣」と揶揄(やゆ)された一因だった。政務秘書官は国鉄の民営化による人員整理で総理府(現内閣府)に移った井上義行氏(現参院議員)で、霞が関ににらみが利かなかった。
岸田政権では松野博一官房長官は安定性があるが、第2次安倍政権の菅義偉官房長官のような威圧感はなく、経済産業省で事務次官を務めた嶋田隆秘書官は「矩(のり)を踰(こ)える」タイプではない。ましてや首相秘書官に就任したばかりの岸田首相の長男・翔太郎氏に過剰な期待ができるはずがない。
最近では「岸田首相は週末に憂鬱(ゆううつ)になっている」との話を聞く。多くの世論調査が週明けに公表されるためだ。実際に9月には全ての調査で内閣支持率は下落。そして10月7日から10日に行われた時事通信の調査では、前月比4.9ポイント減の27.4%と、ついに政権維持の危険水域とされる20%台まで落ち込んだ。さらに自民党支持率(23.5%)と合計した「青木率」(内閣支持率と与党第一党支持率を足して50ポイントを下回ると、現政権は危ないと言われる)はついに50.9まで下落した。
いま岸田首相がもっとも懸念するのは、山際氏の辞任を端にドミノ辞任が生じることだろう。10月28日には物価高騰対策を柱とする財政支出39兆円、事業規模71.6兆円程度の総合経済対策を閣議決定したが、その内容は予備費などを組み入れ、最大限に膨らませたもの。これで一気に国民の支持を回復したいところだが、すでに「来年春の広島サミット花道論」もささやかれている。岸田首相の憂鬱はもはや、週末に限らない。
(政治ジャーナリスト・安積明子)