■個性を強みに自分を「タレント化」してつながっていく
意外なつながりや出会いを経て、これまで数々の面白い化学反応を起こし続けてきた川田さん。多様化する時代を乗り切るポイントは「つながること」。そのためには個々の「タレント化」も重要だ。
「サウナや日本酒、料理、クラフトワークなど、好きなアイテムはなんでもいいですが、個性とスキルを両輪にして誰もが『タレント化』する。すると、想像もできないような役割や活躍できる場も増える。その人らしさを打ち出し認め合うことができると、自己肯定感が高まり、みんなとたんにイキイキしだします」
その人のもう一つの顔によって、周囲とフォロー、フォロワーの関係のようになれる。コミュニケーションも増え、相互に掛け算がうまれ、仕事にも新たな創造性が生まれていくという。しかもそれは、誰もが得をするWin-Winの関係だ。
パラレルワーカーとしてサウナプロデュース業もこなす川田さん。一級建築士としての本業と複業、そのどちらも全力でこなす。サウナ側で出会った人たちがコクヨ側の人脈につながることもある。
「実はコクヨもオフィス家具を売っているというより『働き方を売っている会社』。新しいワークスタイルを常に社員が考え、自ら実践している『実験カルチャー』がベースにあります。そのおかげで自律的に考えて行動する個性的な仲間も増え、こんなユニークな活動を受けとめて応援してくれている会社や上司、仲間には感謝しかありません」
コクヨ社員として、一つの新しい働き方のロールモデルとして、「カワちゃんにしかできない仕事」をこなす川田さん。たとえば、社内外の“隠れサウナー”とのコミュニケーションツールにもなることを狙った「サウナワーカー」ブランドも立ち上げ、Tシャツなども取り扱っている。また、企業のサウナ関連グッズのプロデュースにもかかわり、サウナ用テントを景品とした日清食品の「カップヌードルクエスト プレゼントキャンペーン」の「サウナカップヌードル」もプロデュースし、そのテレビCMにも出演。芸人やタレントとのコラボレーション企画ではYouTubeにも登場する。
次の目標はサウナを通じての地域貢献だという。2022年6月に富山県立山町にオープンした「土の中の一棟貸切型サウナホテル」として話題の『The Hive』も川田さんによるプロデュースだ。立山連峰の自然やハーブ園など、地域の既存の魅力を最大化し、全身で体感できる点も話題を呼んでいる。人気が過熱しつつあるサ旅(サウナ旅)やワーケーションで行きたくなる場所をサウナとの掛け算によって唯一無二の場所に昇華し、発信する。新たなワークスタイルを超えたライフスタイルへの挑戦が始まっている。
(文・石川美香子)
【前編も読む】>>「服も肩書も脱ぐ」コクヨの社長秘書は「サウナ部長」 企業サウナ部が脚光を浴びる理由
川田直樹(かわた・なおき)
大阪府立大学工業高等専門学校卒業後、オフィス空間の設計・工事を手掛けるコクヨエンジニアリング&テクノロジー株式会社に入社。29歳で当時最年少課長となり、副部長、部長を歴任。現在はコクヨ株式会社の秘書室の社長秘書 兼 イノベーションセンター所属。一級建築士の資格を持ち、企業のオフィス構築などを手掛けるなか、社内にサウナ部を創設。企業サウナ部ブームの礎を築く。フィンランドサウナアンバサダー、JAPAN SAUNA-BU ALLIANCE共同代表。パラレルワークとしてサウナプロデュース、イベント、サウナ関連グッズの開発、地方創生にも携わる。