企業の部活動として「サウナ部」が脚光を浴びている。そのブームを牽引し、プライベートの領域と思われていたサウナのビジネス的価値を押し上げてきたのは、一人のサウナ好き会社員だ。コクヨ株式会社に勤める川田直樹さん(37歳)、通称“カワちゃん”。「サウナ伝道師」への道のり<後編>は、社外のサウナー・非サウナーを巻き込みながら企業サウナ部ブームを牽引することになった経緯やサウナ企業連合の発足への道のり、次世代的ワークスタイルなどにも迫る。(前編はこちら)
【写真】川田さんプロデュースの「サウナカップヌードル」はこちら!
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コクヨ社員で一級建築士、サウナ部長の川田直樹さん。2016年にその後の企業サウナ部ブームの先駆けとなるコクヨサウナ部を立ち上げたが、ついに趣味のサウナを仕事にもしてしまう。これまで手掛けてきたオフィス空間の構築にも通じる、サウナとコワーキングスペースの融合だ。2018年、常連だった横浜のサウナ施設『スカイスパYOKOHAMA』を世界初の「コワーキングサウナ」に生まれ変わらせてしまった。
「当時、まだリモートワークがそれほど普及していないなかで、サウナでととのったあと、よく実験的に施設内のレストランゾーンに仕事を持ち込んでいたんです。サウナ後は頭もクリアになり仕事もはかどるので、『いっそここにワークスペースがあったら最高だなぁ』ってずっと思っていて。それで、ワークスペースの図面を頼まれてもいないのにかいて、『未来のニーズとしてこういうスペースがあったら喜ぶ人がいますよ』と施設側に直接持ち込んでみたんです。もちろん最初はすごく驚かれましたよね」
当時、企業のサウナ部が続々と誕生しているという背景もあって、施設側もその部活動の一助となるべく、「サウナ部会員制度」を創設。さらに、川田さんの提案を機に、ハード面でも働きやすい環境作りとして「コワーキングサウナ」のスペースも模索し始めた。
「ビジネスとして新規事業を探していたわけではなく、施設に愛着のある一ファンとして、自分がほしいと思ったスペースを提案しただけでした。でも結果的に施設側からその後、『カワちゃん、やってもらえますか?』と、ワークスペースの設計のオファーをもらい、コクヨとして基本計画に携わらせていただきました」
レストランやマッサージゾーンにワークスペースが追加され、平日の日中に利用できるシーンを作ったことでフリーランスワーカーなどの新たな利用者も得た。結果的に利用者は増加。最近では企業勤めのリモートワークスタイルも加速したことでさらに増加し、年齢層も10歳ぐらい若返ったという。