もともとワークとライフを交ぜているような人間だったという川田さん。提唱しているのは「ワーク・ライフ・バランス」ならぬ「ワーク”サウナ“ブレンド」だ。
「コロナ禍でリモートワークが増え、家が職場化したことで、むしろ際限なく働き詰めになり、心身が休まらないという人も増えましたよね。じゃあ、ワークとライフの間にサウナを入れてみては、と。サウナによって心とからだのコンディショニングができ、リセットできる。ほどよい日常に戻ることができるわけです」
■サウナは属性やライフスタイルを問わない「フラットな話題」
企業サウナ部が続々と誕生している背景には、企業がサウナを社員のコミュニケーションの場として活用しようとしているという事情もある。どの企業も今、社内のコミュニケーションの希薄化や帰属意識が薄れていることを危惧しているという。
「雑談でもして社内交流を深めようにも、ミーティングもリモートが増えているし、話題選びも難しい。サウナなら道具も技術もいらず、野球やサッカーみたいに『どのチームのファンか?』などの派閥や属性が生まれない。たとえサウナに一緒に入らないにしても、初対面でも性別やライフスタイルを問わず、誰もがフラットに会話に入りやすいテーマなんです」
コクヨ社内でも、サウナを軸に部署や上下関係などの垣根を越えたつながりが生まれ、理想的な“オープン・フラット・コミュニティー”が築けた。思いがけない成果から、昨今の企業サウナ部ブームを牽引することになった。
サウナ部ブームの兆しがみえ始めたころ、JAL(日本航空)のサウナ部部長、岡本昂之さんから声かけがあり、7社のサウナ部代表が集結した。「サウナを起点とした異業種共創ができないか」というのがJALの狙いだった。
「JAL社内の会議室に数人で集まったわけですが、『サウナを共通言語に社外の人とつながりあう。このこと自体に唯一無二の価値があるのでは?』という強烈な気づきがそこでみんなにあって。その日のうちにサウナ企業連合JAPAN SAUNA-BU ALLIANCE(JSA)の構想発足も決まりました」