「最低でも引き分けたかったというのが正直なところ。そんなに守備に関しては悪いとは思っていなかったというか、最後のところで守るということで、相手にボールを持たれても我慢してブロック敷いていればやられないなという感覚は前半からあった」(遠藤航)
「0-0で終わるのは悪くないと思ったし、最悪、この試合自体が0-0で終わっても別に悪くはないよねっていう感覚ではあったと思います。もちろん3はほしいですけど、最低勝ち点1取れれば」(鎌田大地)
選手たちが口にしていたように、どうプレーすべきかはしっかり共有されていた。とはいえ、その瞬間瞬間の判断には難しさがあり、ところどころでズレが生じていたように映った。
■鎌田が山根に叫んだ真意
前半の終盤、鎌田がピッチ上で山根視来に対して声を荒らげた。「もっと前に出ていいんじゃないか」と考えたからだ。前から守備に行けば相手をはめられる状況だったが、山根のポジションが深く、堂安律との間隔が空いてしまって、それができなかった。「なんでそんなに後ろに余ってるのって感じだった」と鎌田は振り返った。山根も山根でリスクを考えてポジションを後ろに取っていたのだろう。
コスタリカの堅い守備の前になかなか攻めの形をつくれない状況の中、日本の選手たちは、勝ち点3を手にするための攻撃意識と、勝ち点1を獲得するためのリスク管理の狭間でバランスを取る難しさに直面する。鎌田と山根のやりとりは、意識をすり合わせる行動であり、大歓声の中で意思を伝えるために鎌田は叫んだのだった。
吉田麻也も「もちろん勝ちにいきますけど、時間帯によっては例えば81分ぐらいに失点しましたが、あのまま85分になって最悪引き分けという可能性もあるし、逆に相手が前に出てきたところをカウンターということも考えられる。それはピッチの中で相手のリズムや自分たちのテンポや状況で判断しないといけない」と、この試合のスタンスについて話している。刻一刻と変わる試合状況の中で、チーム全体の意識を合わせ、プレーを調整していくのはかなり難しいものだ。
■挑むは“最強”のスペイン
ケガ人がいて、中3日という試合間隔でもあり、日本はドイツ戦からメンバーを5人代えてコスタリカ戦に臨んだ。「勝ったチームには触れない」というセオリーそのままに、ケガ人を除き、ドイツ戦に臨んだベストメンバーで戦う選択もあったはずだが、森保一監督はそうはしなかった。結果、主力とサブの組み合わせとなり、このチームの積年の課題である『状況に応じた意思統一』が難しくなったのかもしれない。