「例えば、実際にゴールが決まった瞬間から少し時間が経ってから、ABEMAの画面上でゴールが入るので、ユーザーのコメントが表示されていたりすると、そこにズレを生じる。あと、テレビと違って、通信費がかかる。でも、テレビに対するマイナス点って、もうそのくらいしかない。実際、日本-ドイツ戦においてABEMAはテレビとほとんど変わらない存在であることが明らかになった」
■W杯は最後の大きな投資か
まさにこのことが、ABEMAが今回、巨額を投じてW杯の放映権を手に入れた目的であると、西田さんは言う。
「要するに、ABEMAは民放と肩を並べる存在であることを広く国民に知らしめた。それによって利用者数が安定し、それを求めて大きなクライアントの広告が入ってくるようになる。なのでABEMAの経営陣は、W杯の放映権を取りにいったことについて『ABEMAを次のステージに移行するための投資』という言い方をしています」
さらに西田さんは、「W杯の日本戦以上に同時視聴があるスポーツコンテンツといえばワールド・ベースボール・クラシックくらいでしょう」と指摘する。
「つまりこれ以上、映像配信のインフラに負担をかけるものは考えづらい。今回1000万人が視聴しても映像が止まらなかったわけですから、ここからは改良やメンテナンスに費用を払えばいい。極論すれば、今回の放映権料の支払いは最後の大きな投資だったのでしょう」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)