移動中でも見られることに便利と感じたユーザーも多いはずだ(写真/アフロ)
移動中でも見られることに便利と感じたユーザーも多いはずだ(写真/アフロ)

「藤田社長いわく、『同業他社はどこも同じようなことを考えますが、ここまでやってしまえば、もう誰もついてこられないでしょう』という話です」

 それこそが、設立以来、ABEMAがほぼ毎年のように150億円以上の営業赤字を出し続けてきた背景でもある。並みの経営者であれば、そのようなことはなかなかできないだろう。

「ABEMAは赤字でも、親会社のサイバーエージェント(藤田氏は同社の社長を兼任)はさまざまな事業で黒字を出している。だから、自分の責任においてABEMAに投資を続けても株主は文句を言わないんですよ、という趣旨のことを藤田社長は言っていました。要は、サイバーエージェントが成長するためには投資をしなければならない。その投資先としてABEMAを選んだ、というわけです」

■定着すれば「絶対にテレビで見る」

 ABEMAはスマホのような持ち運べる画面で見られるだけでなく、アマゾンが展開する「Fire TV Stick」などを使えば、簡単に大きなテレビ画面でもW杯を視聴できるようになる。

「それも藤田社長がABEMAを立ち上げたころから言っていたことです。スマホやパソコンでABEMAを見るというのは初期段階であって、広くABEMAが定着すると絶対にテレビで見るよ、と」

 ただABEMAには、家電メーカーに頼って、配信映像を映し出す機能が組み込まれたテレビが普及するのを待つという選択肢は、最初からなかったという。

「アマゾンがFire TV Stickを普及させてくれるのであれば、それに乗らない手はない。お互いマイナス点は一つもない。だからアマゾンに積極的に協力を依頼していくと、藤田社長は当初から言っていました。ABEMAとアマゾンが連携することでW杯も映画も見られる。大画面でABEMAの視聴を定着させるという意味でもW杯は大きな意味を持っていたわけです」

 ただ、ABEMAはテレビと違って、数秒の遅延が生じる弱点がある。

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W杯こそ最後の大きな投資に