「もうスマホの充電がないから」と警備員に突っかかったり、子ども用の水筒の持ち込みでもめていたりするサポーターもいた。その横では、アメがカバンに入っている、という理由で口論にもなっていた。
筆者は持っていたカメラがチェックにかかった。
「これまでのW杯でカメラを持ち込めなかったことはない。シャッターを切って、カメラだということを証明する」
と抗議してもまったくとりあわない。ゲートから遠く離れた専用ロッカーまで行き、カメラを預けなければならなかった。
私の前に並んでいたのは、3試合目の観戦になるというスイス人のサポーター。あきれた様子で、
「薬を持っていたサポーターが止められて大声で怒鳴りあっていた。私は、目薬を何度もチェックされ、仕方なく警備員の目の前で使ったよ。行く会場によって、警備員や警察の判断がまったく違うので困る」
と愚痴っていた。筆者はスペイン戦ではカメラは持っていかなかったが、今度はリュックサックに入っていた頭痛薬が警備員の目にとまった。
薬であることを認めようとしない警備員。何度も何度も頭痛薬だと説明し、専用ロッカーに預けるのは免れた。やはり同じように、薬を箱ごと持っていたサポーターは警備員と言い争いになり、警察官が出動する事態になっていた。
一方で、コンパクトカメラを首からぶらさげていたサポーターがなんらトラブルなく、持ったまま入場しているのも見かけた。
ドーハの繁華街にあるW杯のチケットセンターで、スタッフに会場の空調や入場のセキュリティーについて尋ねると、
「カメラくらい持って入ってもいいと思う。だけど、W杯で外国人の警備員や地下鉄の案内役を一気に増やしたので、十分に教育が行き届いていない。私もサポーターから何度も苦情を聞いた。W杯もグループリーグから決勝トーナメントとなり、警備員や案内役も慣れてきたのでトラブルは少なくなっていると思う」
とのこと。そして、アルコールについても、
「どこでビールが飲めるのかという問い合わせもよく聞きます。とにかくカタールにこんなにたくさんの外国人が来ることがなかったので。決勝戦ともなれば、みんな要領を得て、もっときちんと対応ができる。サポーターの皆様にも満足してもらえるはずです」
その日まで、日本代表が勝ち残れることを祈りたい。
(AERA dot.編集部 今西憲之)