パ・リーグでもうひとつ注目なのがソフトバンクのサードだ。長年ホットコーナーを守っていた松田宣浩が退団し巨人へ移籍。今年は開幕直後はガルビス、シーズン終盤は周東佑京が守ることが多かったが、他にも多くの選手が起用されており、絶対的なレギュラーは不在の状況である。期待が大きいのはやはりリチャードではないだろうか。昨年は34試合の出場ながら7本塁打を放つと、今年は一軍での成績は落としたものの二軍ではウエスタン・リーグ記録となる29本塁打をマークし、ホームランと打点の二冠に輝いている。長打力はチームでも屈指の存在であるだけに、来季こそはブレイクを期待する声が多い。

 もう1人の有力候補が野村勇だ。ルーキーイヤーの今年は主に内野のバックアップ要員として起用されたが、10本塁打10盗塁を記録するなど貴重な戦力となった。高い守備力とスピードはリチャードにはない武器である。チームは日本ハムからFAとなっていた近藤健介を獲得したが、中軸は左打者が多いだけに右打者であるリチャードと野村の2人は3年ぶりの優勝奪回へのキーマンとも言えるだろう。

 今年もセ・リーグでは高校卒3年目の長岡秀樹(ヤクルト)がいきなりレギュラーをつかみ、一方のパ・リーグでは11年目の松本剛(日本ハム)が首位打者に輝くなど、意外な選手の台頭があったことは確かである。来年も彼らのように、ブレイクする選手が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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