22年3月にも、夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定を「合憲」と判断した最高裁第3小法廷の決定が出た。ただ裁判官5人中、2人が「違憲」と判断し、原告らからは選択的夫婦別姓の議論の進展に期待を寄せる声が聞かれている。「違憲」と判断した渡辺恵理子裁判官は、自身も旧姓で仕事を続ける女性の一人でもある。違憲と判断した理由として、「選択を与えることこそ、個人の尊厳の尊重」「制約が若い世代の将来の足かせとならないようにすべき」と言及した。

 記者の夫が、名字を変えて約4年。夫は、ようやく最近になって、新たな名字が馴染むようになってきたという。名字が変わった4年間を振り返り、気持ち新たに“第二の人生”を過ごしてきたような感覚だとも続ける。

 いわく、「自分の前の名字は〇〇だったか」と、最近になって思うようになった。男性で名字を変えた人は少ない分、他の人が経験していないことを経験できて、ある意味で世界が広がった。何より、名字を変えても自分は自分。たかだか名字ぐらいのことで、自分が変わるわけではない――。これが名字が変わって4年経った現在の心境だそうだ。

 私自身も、最近になってようやく、夫が自分の名字になったことに慣れてきた。最初のころは、夫が自分の名字で呼ばれるたびに、複雑な思いが去来したものだ。結婚後、夫は運転免許証や健康保険証を始め、各種書類の名前変更をし、新たな名字になった名前で郵便物が届く。「なんか変な感じだな」とつぶやく当の夫は、さして気にするそぶりがないものの、「本当は私に言えない複雑な気持ちを抱えているんじゃないか」と気を揉むこともあった。

 今回、あらためて夫が名字を変えるに至った判断を掘り下げるなかで、初めて知ったことがある。夫の判断に、私の祖母や父の言葉が一切影響していないということだ。

「妻側の実家から頼まれたから折れた、妻の意向に沿った、ということだったら、何かがあったときに“名字まで変えてやったのに”となるかもしれない。でも僕は、妻側の意向は全く考慮せず、最終的に自分の気持ちだけで判断したから、それがない」

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何事にも選択肢はあったほうがいいのでは?