写真はイメージ(GettyImages)
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結婚の法律学』(有斐閣)などの著書で知られる早稲田大学の棚村政行教授(法学部)は、次のように指摘する。

「中途半端に通称を名乗れるようにすることで、余計に管理が大変になる。行政上の手続きや戸籍管理の視点においても、本名と通称を名乗れるようにするより、選択的夫婦別姓に統一したほうがさまざまな負担も減るはず」

 長年にわたり、さまざまな政策の決定に携わってきた前出の前川さんも、「選択的夫婦別姓によって、行政上の管理やシステムが煩雑になることは考えにくい」と明かした。

「現在の行政のシステムは、戸籍や住民登録によって家族単位で管理されています。選択的夫婦別姓は、そうしたシステムを変えることではなく、姓を選べるようにするというだけの話。行政の仕組みを考えるうえで、夫婦別姓が大きな足かせになることは、まずないでしょう。もっと言えば、”家族単位で管理する”戸籍や住民登録も家制度の名残。戸籍筆頭者や世帯主を通じてではなく、本来は個人単位で管理すべきものだと思います」(前川さん)

 選択的夫婦別姓制度についての国会での議論は、反対姿勢を貫く一部の国会議員によって、なかなか進まない現状がある。だが現実に、結婚せずに別姓のまま事実婚をしたり、仕方なく夫婦同姓の法律婚をしてみたものの納得できず、ペーパー離婚して元の姓に戻したり、とりあえず不便な通称使用でしのいだりしている「現行の制度に困っている」人たちがたくさんいる。

 こうした状況を少しでも変えたいと「自分にできることをやろう」と動いているのが、選択的夫婦別姓問題の当事者でもあるサイボウズの青野社長だ。青野さんは、21年に「ヤシノミ作戦」という個人プロジェクトを立ち上げ、現在も活動を続けている。選択的夫婦別姓や同性婚に反対する議員の名前と選挙区をリストアップし、有権者が選挙で選択しないように「ヤシの実のように(選挙で)落ちる」ことを目的とした作戦だ。

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