良性である神経鞘腫は、神経の鞘のような部分に沿ってできる腫瘍で、その8割は聴力をつかさどる聴神経周辺にできます。早期では聴力低下や耳鳴りなどが起こり、進行とともにめまい、ふらつきなどの症状が表れて見つかることもあり、脳幹が圧迫されると歩行障害なども起こります。近くにある顔面神経が障害される場合もあります。
下垂体腺腫は、ホルモン分泌に重要な役割を果たす下垂体にできる腫瘍で、ホルモンを分泌するホルモン産生腺腫と、分泌しない非機能性下垂体腺腫に大きく分けられます。
成長ホルモンを過剰に分泌する場合、先端巨大症や巨人症を発症し、副腎皮質ホルモンを過剰に分泌する場合はクッシング病を発症します。ホルモンを分泌しない腫瘍は、視力・視野障害などによって見つかることがあります。
髄膜腫は、頭蓋骨の内側で脳全体を包んでいる髄膜にできるため、あらゆる部位で腫瘍ができる可能性があります。多くは良性ですが、まれに悪性の場合もあります。症状は腫瘍ができた部位により千差万別です。
■脳腫瘍の診断
脳腫瘍は、CTやMRIで撮影した画像により腫瘍の位置、大きさ、形状などを調べて診断されます。腫瘍と血管の関係を見るために脳血管造影検査などをおこなうこともあります。さらに診断を確定的にするためには、腫瘍部分の組織を取って病理検査をする必要があります。
「脳腫瘍は画像だけでは確定診断が難しい場合があります。特に脳実質内腫瘍で、他の病気が疑われたり手術が難しい部位の場合は、生検で組織診断することもあります」(川俣医師)
■代表的な脳腫瘍の治療
脳腫瘍では、腫瘍近くにからだのさまざまな機能をつかさどる神経が張り巡らされているため、腫瘍を摘出するには、それらの機能を損なわないようにする必要があります。それが脳腫瘍治療の難しいところです。
主な治療法は手術、放射線治療、化学療法(薬物療法)で、腫瘍の種類、大きさ、部位、症状の有無、患者の年齢、全身状態など、さまざまな要因を考慮して選択します。腫瘍が大きい場合には手術が第1選択になり、小さい場合は放射線治療をおこなうこともあります。良性腫瘍の多くは、無症状であれば経過観察の場合もあります。