悪性の神経膠腫の場合は手術で腫瘍を完全摘出することが難しいため、できるだけ腫瘍を摘出した後に化学療法、放射線治療などをおこないます。
また手術について、川俣医師は次のように話します。
「腫瘍の近くにある脳や神経を刺激し、手足の動きなどを確認する神経モニタリングを併用して手術をおこないます。この方法により腫瘍摘出度を高めつつ、後遺症を最小限に抑えることができます」
良性の神経鞘腫(聴神経鞘腫)で、例えば若年者で脳幹圧迫があり、腫瘍も大きい(3.5センチ以上)場合には手術が第1選択です。腫瘍が小さく、部位、形状も難しくない場合は、定位放射線治療(ガンマナイフなど)がおこなわれます。腫瘍が1立方センチメートル程度の場合は90%以上の制御率があると言われていますが、根治性は低いと言われています。
下垂体は鼻の奥に位置するため、下垂体腫瘍に対しては鼻から内視鏡を入れておこなう経鼻内視鏡手術が主流です。
大阪公立大学病院脳神経外科教授の後藤剛夫医師はこう説明します。
「経鼻内視鏡手術は、開頭による顕微鏡下手術よりも視野の確保が容易で安全性にも富んでいます。部位によっては高い手技が必要ですが、患者さんのからだへの負担が少ない手術です」
腫瘍ができた部位によっては難度が高いため、開頭手術をおこなうこともあります。また、ホルモン分泌に異常をきたしている場合は、腫瘍が小さくても手術適応となります。
唯一、プロラクチン産生腺腫の場合は薬物療法が適応となります。
髄膜腫で良性の場合はできるだけ腫瘍を摘出しますが、頭蓋底にできた腫瘍の場合には手術の難度が高くなります。また、グレード2、3という悪性腫瘍の場合にも、慎重に手術することが求められます。組織診断も必要です。
「頭蓋底はさまざまな脳神経が貫通している部位のため、顔面神経麻痺、嚥下(えんげ)、視神経への障害が出ることもあり、十分な注意が必要です」(後藤医師)