進行すると関節軟骨の破壊が進み、骨と骨が直接ぶつかるようになって股関節が変形し、痛みも増してきます。変形性股関節症の原因の8割以上は寛骨臼形成不全ですが、残りの約2割は生まれつき寛骨臼形成不全でなくても、FAIのほか、加齢や肥満、腰椎の変形などで発症するケースです。
神戸海星病院病院長の柴沼均医師はこう話します。
「変形性股関節症によって痛みを感じ始める時期としては40~50歳です。寛骨臼形成不全がある場合は30歳前後から痛みが出ることもあります」
その症状について座間総合病院人工関節・リウマチセンターセンター長の草場敦医師はこう説明します。
「痛み方には個人差があり、足の付け根の前側が痛む場合やお尻側が痛む人もいます。歩くと痛みが出るものの、じっとしていると痛みは出にくい。ただし、進行してくると安静時にも痛むようになってきます」
■まずは保存療法で痛みの改善を目指す
変形性股関節症は進行性の病気なので、いったん変形してしまった股関節を元に戻すことはできません。進行すると手術が必要になりますが、治療の基本は保存療法です。痛みや変形度合いが比較的軽度であれば、まずは、しゃがんだり、かがんだりなどの股関節に負担がかかる動作を避ける、和式の生活からイスに座る生活に変えるなど、生活の改善をおこないます。股関節周囲の筋力の強化やストレッチも進行の予防には有効です。
痛み止めの内服や消炎剤入りの湿布を貼付する薬物療法などもおこないます。また、2~3キロの減量によっても痛みが和らぐ人もいます。
50~60代で発症するケースの多くは閉経後の女性で、女性ホルモンの減少などの影響もあり、肥満度も高い傾向にあるといいます。
「足が痛むと運動不足にもなりがちです。医師や栄養士と相談しながら食生活を改善し、理学療法士のすすめる自宅でのリハビリメニューをこなしてもらっています。積極的に治療に参加する意識がもてると症状も改善に向かうことが多いと思います」(草場医師)