からだの中心部にあり、体重や動作を支える大切な股関節。加齢によって股関節にトラブルが生じ、痛みが生じることがあります。中高年の股関節の痛みの中で最も多いのは関節軟骨がすり減り変形する変形性股関節症です。変形性股関節症は進行するほど治療の選択肢は限られていくため、痛みを感じたら早めに診察を受けることが重要です。本記事は、2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。
* * *
股関節の痛みの原因となるおもな病気には「変形性股関節症」「大腿骨頭壊死症」「大腿骨寛骨臼(かんこつきゅう)インピンジメント(FAI)」などがあります。
「変形性股関節症」と「大腿骨頭壊死症」は立ち上がったときや歩いたときなどに股関節が痛む病気です。大腿骨頭壊死症は血流不全により大腿骨頭部が壊死する病気ですが、壊死の範囲が広く、骨頭の変形や痛みが強い場合は手術が必要です。
FAIは股関節を動かしたときに大腿骨と寛骨臼の縁がぶつかって痛みが出る病気です。生まれつきの股関節の形態異常に加え、加齢や環境変化によって痛みを生じるケースのほか、バレエやダンスなど股関節を大きく動かすスポーツ経験者にも発症リスクは高いとされています。進行すると関節軟骨のダメージが進んで、変形性股関節症へと進展します。
■関節軟骨のすり減りが進むと、変形性股関節症に
この中で患者数が最も多いのは関節軟骨がすり減り変形する変形性股関節症です。股関節は大腿骨の先端にあるボール状の「大腿骨頭」を骨盤にあるおわん状の「寛骨臼」が包み込む構造をしています。日本人は先天的に寛骨臼の面積が狭い「寛骨臼形成不全」の発生頻度が高いとされ、その9割は女性です。形態異常により股関節の一部に負担がかかってしまうため、その部分の関節軟骨が徐々にすり減り、股関節周辺に痛みが出てきます。