痛みをとる新たな保存療法として、PRP(多血小板血漿)療法もあります。患者自身の血液に含まれる抗炎症性物質と成長因子を利用して炎症を抑える再生医療です。効果には個人差がありますが、約7割に効果が見られるとされています。ただし、保険診療ではないので注意が必要です。
■手術のタイミングはライフスタイルに合わせて決定を
保存療法で症状が改善せず、関節の変形が進行し、安静時にも強い痛みが出るような場合には手術の対象になります。
「手術は生活の不自由具合によって医師と相談して決めるとよいでしょう。50~60代ですと子育てや仕事、親の介護、ペットの世話などですぐに受けられない人も多く、本人が納得するタイミングまで保存療法をしながら待つ場合もあります」(同)
手術には大きく分けて、関節を金属やセラミックなどの人工関節に置き換える「人工股関節置換術」と骨を温存して変形した股関節の形を整える「骨切り術」、関節軟骨の変形部分だけを取り除く低侵襲な「関節鏡視下手術」があります。
関節鏡視下手術は変形がほとんどない人向けで、治療も一時的な場合が多く、変形があって手術を受ける場合は、骨切り術か人工股関節置換術のどちらかを選択することになります。
「50代以下とまだ年齢が若く、股関節に軽度の変形はあるものの、まだ軟骨が傷んでいない場合には、骨切り術を選択できることがあります。人工的な骨折と同じ状態になるため、骨がつながるまでに時間がかかり、社会復帰に2カ月程度かかりますが、自分の骨を温存でき、術後に動作の制限がなく、スポーツも可能。活動度の高い人向きの手術です」(柴沼医師)
関節の変形が激しく、骨切り術の適応にならない場合や早い社会復帰を望む場合は人工股関節置換術がすすめられます。
「人工股関節置換術はその対象や年齢を選ばず、ほぼ確実に痛みをとることができる治療成績のよい手術で、もっとも多く実施されています。人工関節の耐久性も非常に高くなっているため、いまは40~50代の人に手術をするケースも増えています」(草場医師)