小町には不思議な力がある(提供)
小町には不思議な力がある(提供)

 私はそんな小町に、日本であることを試しました。モンゴル語の先生から「ロシア東部のある習慣で、新居を建てたら初めにを入れ、その猫が一番初めに横たわった場所を『家の主の部屋』とするといい」と聞いていたからです。小町はどこに横たわるでしょうか。

 ちょうど実家は建てたばかり。日本に着いてすぐのこと、小町を室内に放つと一部屋一部屋丁寧に探索を始め、1時間ぐらい経つと姿が見えなくなりました。どの部屋を探してもいないので、家から出てしまったのかと外も探しました。慣れない家だし、しばらく一部屋で過ごさせておくべきだったと反省した時、「家の主の部屋」のことを思い出し……まさかと思い、和室の仏壇を確認したら、小町は祖父の仏壇の上で“箱座り”していたんです。

 仏壇は確かに家の主の居場所!祖父は動物好きの優しい人で、歩いているとけがをした犬がついてきたり、羽や足を痛めた鳥や猫が部屋に入ってきたりすることがありましたが、仏壇の小町を見上げながら、祖父との不思議な繋がりを再度、感じました。

読書しながら居眠り?!(提供)
読書しながら居眠り?!(提供)

■晩年にモンゴルからの「使者」

 あっという間に実家に慣れ、両親にも可愛がられた小町なのですが、持病(猫白血病ウイルス感染症)があるせいか、毎年のように体調を崩していました。

 何度も立ち直ってきたものの、亡くなる2年前ぐらいから慢性腎不全を患いました。最後の年のこと、小町がいつも寝ている場所にいないので、どこにいるか探したら、祖父の仏壇の前の座布団に“ひっくり返って”いたのです。その翌日から小町の目が見えなくなりました。

 獣医さんによると、失明は慢性腎不全の影響で血圧が上がった影響か、脳腫瘍等による神経の圧迫だろうということでした。でも、小町は視力を失ってからも懸命に生きました。視力を失う代わりに、私のために少しでも長くこの世に残ってくれたのかな、あの時、小町はそんなことを祖父にお願いするために座布団の上でお願いしていたのかなと、今になって思うんです。その頃の私はあまり元気がなかったから……。

日向ぼっこでリラックス(提供)
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小町の最晩年に心にひっかかったこと