飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回ご紹介するのは、中国地方在住の40代の日本語教師、小野リカさんの飼い猫の話です。滞在していたモンゴルで、ある覚悟を持って飼い始め、日本に連れ帰りました。癒しをくれただけでなく、不思議な体験も多くさせてくれたそうです。猫から教わったこともあるといいます。
【写真】モンゴルの女の子が作ってくれたプレゼントに囲まれた小町(提供)
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昨年9月に私の猫「小町」が天寿を全うしました。持病がありながら、平均年齢を超えた18歳6カ月での大往生です。小町と過ごした日々を振り返りたいと思います。
私は20代から30代にかけて8年間、日本語教師としてウランバートルに滞在しました。小町と出会ったのは2004年。知人の猫を預かり、返した後にペットロスになり、落ち込む私を見かねたモンゴル人の友人がペットショップに連れて行ってくれました。そこにいた子猫の銀色に輝く毛色にひと目惚れしたんです(のちにふつうのキジトラになりましたが)。
名前については、雌猫として強く気高くあってほしいと思い、モンゴル女王マンドハイやロシア女王エカテリーナを名前の候補に挙げましたが、モンゴルでは動物に人名を付ける習慣がなく、友人にも大反対されたため、日本人名から選ぶことして、自分の苗字の「小野」と合う小町にしました。美女として才女として名高いあの小野小町です。我が家の小町のキャラはツンツン、目の上の毛が下がった愛らしい“困り顔”でした(笑)。
モンゴルでは猫に不思議な力があるとされ、特に子猫は「飼い主や家族の不幸を持っていく(病気や邪気から守る)」と信じられています。私は自分の癒しとともに、日本にいる祖母(当時75歳)の長寿を祈り子猫を飼いましたが、本当に猫にそんな力があるなら、「この子には家族の不幸を背負わせるだけではなく、死ぬまでたくさんの愛情を注ぎ、一緒に楽しく幸せに暮らしたい。この世を去る時には自分の腕の中で看取ってあげよう」と思いました。
海外でペットを飼い始め、帰国する際に連れて帰らない人も多くいるのを知っていたので、自分は責任を持って最期まで「飼い遂げる」と心に決めたのでした……。