■日本に帰国後、キャラが変わった
2008年12月、私は小町を連れて日本の実家に帰ることにしました。
ウランバートルから成田まで飛行機で5~6時間。私が搭乗した国際線では、ペットは貨物室に預ける規定でしたが、当時真冬のウランバートルの気温はマイナス30度。
「貨物では猫が死んでしまう。機内持ち込みに」と交渉し、機内に入れることができました。長旅で怖い思いをしたはずですが、小町は私を信じて日本までついてきてくれました。
帰国してから小町の避妊手術をするために血液検査をしたところ、猫白血病ウイルス感染症(キャリア)がわかりました。避妊手術で体力や免疫が落ちると、それを引き金に白血病発症の恐れがあるため迷いました。でも、避妊しないと発情が続き、実家で飼うのが難しい。家族と話し合い、手術を受けさせました。
無事に手術が終わり発症もしませんでしたが、その後、小町のキャラが変わりました。
ツンツンしたお姫様気質だったのが、おてんばで子供っぽい性格になって。私のお風呂やトイレの“出待ち”をしたり、私が部屋を移動すると後から“いそいそ”とついてきたりして、毎晩同じベッドで寝るようにもなったのです。「こんなに変わるの?」と驚いたものです。
■小町の不思議な能力
日本に移り住んでも「変わらなかった」のは、小町のちょっと不思議な能力です。
モンゴル人の言う通り、猫には不思議な力があると感じることが、たびたびありました。
私がマンションの契約書をなくした時。小町がスーツケースの上に座って尾をピンとアンテナのように立てたんです。何度スーツケースからおろしても同じように「ここ」と合図するように尾を立てる。スーツケースを開けると契約書が出てきたので驚きました。
また、私が亡くなった祖父のことをふいに思い出して「おじいちゃん」とつぶやくと、隣の部屋にいた小町が駆け寄ってきて、キスをしてくれました(ふだんは決して自分からしないのに)。動物好きだった祖父と小町は、なにか繋がりがあるのかと思った瞬間でした。