
腎臓は、血液中の不要なものを濾(こ)して、必要なものだけ体内に戻すなど、生命の維持に大きな役割を果たしている臓器です。糖尿病や高血圧症が原因で、「慢性腎臓病(CKD)」になり、腎臓の機能が著しく低下すると、腎移植や人工透析などの「腎代替療法」が必要になります。
このうち、人工透析では、日常的な通院または自宅での処置が必要になるため、日常生活に大きな影響がでてきます。成人の約8人に1人がCKDに相当し、「新たな国民病」ともいわれている今、腎臓の働きとCKDの関係、腎代替療法に至らないための早期発見、進行予防などについて、予備知識を持っておくことはとても大切です。本記事は、 2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。
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人工透析とは、腎臓の機能が低下した場合に、その機能を機械などで人工的に置き換える治療のことです。なぜこのような治療が必要なのでしょうか。それは、腎臓の機能が生命の維持に大きな役割を果たしているからです。
中心的な仕事は血液を濾過(ろか)して老廃物を尿とともに排泄する働きです。腎臓は肋骨の下あたり、胃や腸の背中側に左右一つずつあり、大動脈から枝分かれした腎動脈が直結していて、常に大量の血液が流れ込んでいます。
この血液は毛細血管が毛糸玉のようにからまった「糸球体」に流れ込みます。糸球体は一つの腎臓に約100万個もあるとされており、血液のうち必要な成分を残し、不要な成分を捨てる濾過をおこなっています。濾過する血液は1分間に約1リットル、心臓から送り出される血液の約5分の1が流れ込みます。こうして濾過され、不要な成分が含まれた原尿が、尿のもととなるのです。
■腎機能の低下による不利益は大きい
東京慈恵会医科大学葛飾医療センター腎臓・高血圧内科診療部長の丹野有道医師はこのように話します。
「腎機能の低下は、糸球体が壊れて、血液を十分に濾過できなくなった状態です。腎機能の低下が進み『腎不全(後述)』の状態になると、血液の濾過が滞って毒素がからだにたまります。尿毒症から命に危険がおよぶことがあるので、人工透析を考えなければいけないのです」