こうした腎機能の低下の原因になる代表的な病気が「CKD(慢性腎臓病)」です。腎機能が慢性的に低下していく病態をさし、日本では軽いものを含めると1330万人の患者がいるといわれています。

「健康診断で『腎臓の機能が下がっていますよ』などといわれ、CKDの可能性を指摘されたら、医師の指示に従って医療機関を受診し、精密検査を受けましょう。CKDは進行するまで症状がほとんどありません。それだけに、病気が見つかったらきちんと治療をし、進行していないかどうか、腎機能の検査を定期的に受けることが大事です」(丹野医師)

■CKDは生活習慣病と密接に関連

 とはいえ、CKDと聞いてもあまりぴんとこないかもしれませんが、その原因は誰もがかかることのある身近な病気にあります。日本透析医学会の調査によれば2020年の時点で透析を受けているCKD患者34万7671人のうち、最も多い原因疾患は「糖尿病性腎症」(39.5%)、次いで「慢性糸球体腎炎」(25.3%)、「腎硬化症」(12.1%)となっています。

 糖尿病性腎症は、糖尿病で細い血管が傷ついて起こる3大合併症の一つで、血糖値が高い状態が続いたことで糸球体の血管が傷ついて発症します。糖尿病の患者数は1千万人ともいわれていて、この二つの病気が密接に結びついていることがわかると思います。

■小児にも起きる原因不明の腎機能低下も

 ほか二つの原因疾患についても解説します。慢性糸球体腎炎は、糸球体に炎症が起こる腎臓病の総称で、約半数はIgA腎症が原因です。糸球体に血液中のたんぱく質の一種である免疫グロブリンの一つ「IgA」が沈着することで、腎機能が低下します。原因不明で、小児から成人まであらゆる年代で起こるのが特徴です。

 腎硬化症は高血圧により糸球体が傷つき、動脈硬化が進行するために発症します。そうして濾過機能が低下することで、血圧を上昇させるホルモンが分泌され、悪循環におちいってしまいます。

 かつては、慢性糸球体腎炎は治療をしないまま放置すると透析導入が不可欠といわれていましたが、岡山済生会外来センター病院腎臓病・糖尿病総合医療センター長の平松信医師によれば、「今は早期発見と治療の進歩により、寛解するケースが増えている」とのこと。

「その一方で、生活習慣病や加齢の影響で起こる糖尿病性腎症は横ばい、腎硬化症は右肩上がりに増えています。まずは、透析の導入にならないよう、こうした病気の予防に努めることです」

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