全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2023年2月27日号にはエスビー食品 スパイス&ハーブマスターの宮城京佳さんが登場した。
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世界中にあるスパイスの種類は350から500種類程度、ハーブの種類は万を超えるとも言われている。
スパイスやハーブで有名なエスビー食品で販売している、香辛料や調味料などの数は現在、100アイテム以上となる。
幾多もあるスパイスやハーブをどう選び、調理に取り入れたらそのおいしさが広がるかを伝えているのが、エスビー食品の“スパイス&ハーブマスター”の宮城さんだ。
「決して主役にはならないけれど、料理をおいしくするのに無限の可能性を秘めているのがスパイスとハーブなんです」
幼い頃から、香りの立つ緑の植物が好きだった。学生の頃には、ブラジルのアマゾン地域の胡椒農家で収穫体験留学をしたこともある。
入社後は、ハーブ営業ユニットに所属し、全国の青果卸売市場や量販店へのフレッシュハーブの販売に携わった。現在は全国の生産者に対して、ハーブの栽培指導や需給調整の業務を行っている。特に「パクチー愛」が強く、北海道のソウルフードとも言える「ジンギスカン」とパクチーを一緒に食べるとおいしいと、スーパーなどのバイヤーさんに提案したところ、売り上げが伸長した。
年間を通してハーブを一定の味わいに保ってもらうためにはどうすればいいかを生産者に説明するため、自ら自宅で栽培し、肥料や日当たりでどのように成長具合に差が生じるのかを研究した。また、収穫前には必ず自分の舌で味を確かめに畑に出向くようにしている。
一昨年には「スパイス&ハーブマスター」の社内資格を取得したことで、一般のお客さんに向けて、スパイスとハーブの魅力を発信する機会も増えてきた。
ハーブ供給ユニットでの業務を行う傍ら、スパイス&ハーブマスターとしてセミナーも積極的に実施している。
「例えば、チャイにはおろし生姜、シナモン、カルダモンを入れることをお勧めしていますが、お客様からも相性の良いスパイスの組み合わせについて、アイデアをいただくので自分の勉強や刺激にもなります」
宮城さんのとっておきは、日本酒にパクチーを入れて飲むこと。おいしさを追求する旅は、まだまだ尽きそうにない。(ライター・米澤伸子)
※AERA 2023年2月27日号