「お前を即戦力では獲っていない。1年目は1軍で投げなくてもいい」と落合GMからアドバイスされた野村だったが、「とにかく結果を出さなければ」とはやる気持ちが裏目に出て、肩を痛めたことが、野球人生を大きく変えた。

 また、社会人2年目に「野球を辞めたい」と思いつめるほどの絶不調に陥りながら、3年目に急成長し、「良くなった理由がわからない」ままプロ入りしたことも、低迷した一因といわれる。

 落合GMは初めて野村を視察したとき、先発で8回3失点の投球内容に「どこにでもいる投手だ」と感じたそうだが、3日後にリリーフしたときに球威が落ちていないのを見て、一転評価を改めたという。中日OBの鹿島忠氏も「普通の投手という感じだった」と回想しており、結果論になるが、最初に見たときの印象が事実に近かったと言えなくもない。

 だが、多少の見込み違いはあっても、落合氏の鋭い洞察力に対する評価は、いささかも下がることはない。

 これからもオレ流ならではの理にかなった選手評で、ファンを楽しませてもらいたい。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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