世代交代か――巨人の遊撃争いが注目されている。不動のレギュラーとして君臨していたのが坂本勇人。プロ2年目の2008年から遊撃の定位置をつかむと、15年間守り続けてきた。坂本の強みは攻守の総合力だ。守備は年々技術が向上し、ゴールデングラブ賞を5回受賞。打撃も首位打者、最多安打のタイトルを獲得しているほか、19年には40本塁打をマークするなど、ミート能力と長打力を併せ持った強打者として、通算2205安打を積み重ねた。
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史上2人目の通算3000安打も視野に入っていたが、近年は故障で戦線離脱する機会が増え、昨年は開幕前を含めて3度の登録抹消。83試合出場と規定打席に到達できず、打率.286、5本塁打、33打点。衰え知らずだったパフォーマンスに、ある「異変」が見られた。
スポーツ紙デスクは、こう指摘する。
「打球が明らかに飛ばなくなりました。安打を打つ技術は健在ですが、長打が少なくなったことで怖さが薄らいでしまった。この春季キャンプは強いスイングで飛距離アップに意識を置いた打撃練習に取り組んでいましたが、昨年のままだと厳しい。足がある選手ではないので長打がないと、6番以降を打つことになる。あれだけの実績がある選手なので下位に置かれても相手バッテリーは神経を使いますが、今は絶対的レギュラーという立ち位置ではない。坂本は遊撃にこだわりがあると思いますが、打撃不振や故障で離脱するようだと立場が危うくなる」。
坂本は今年で35歳を迎える。チームのビジョンを長期的に考えた時に、遊撃の後継者を託せる人材の台頭が渇望されていた。だが、昨年坂本が離脱した期間に遊撃で起用された廣岡大志、北村拓己は物足りなさが否めなかった。中山礼都は攻守で奮闘したが、打力が非力でもう少し時間を必要とする。
今年も坂本の牙城は崩れないかと思われたが、彗星のごとく現れたのがドラフト4位で入団した門脇誠だった。遊撃の守備は堅実で肩が強い。打撃もフルスイングでミート能力も高いことから、「吉田正尚2世」と形容された。何より頼もしいのが身体の強さだ。原監督から「ストロング門脇」と命名されて話題になった。